遺産相続

兄が父の生前に財産を勝手に使っていたみたい。返してほしい!

2017.09.16
遺産相続|弁護士ニュース

兄が父の生前に財産を勝手に使っていたみたい。返してほしい!

<相談内容>
先日、父が亡くなり、相続人は私と兄の二人です。父は亡くなる前数年間は寝たきりの状態で、預貯金の通帳や印鑑などは、すべて父と同居していた兄が管理していました。兄はここ数年羽振りがよく、高級時計や車をよく買っていますが、定職に就いていない兄にそんな大金があるとは思えません。そこで私は、兄が父の預貯金を勝手に払い戻して使っていたのではないかと疑っています。もしそうなら父のお金を返してもらいたいのですが、どうしたら良いでしょうか。

親が高齢になると、子が代わりに財産を管理するという方法がよくとられます。それに伴い、親の死後、残された子の間で、生前の財産の不正使用が問題となることも少なくありません。今回は、財産の不正使用が疑われる場合の対応についてご説明していきます。

1 預貯金の調査

⑴ 取引履歴の開示

 遺産分割を正確に行うためには、被相続人の財産を正確に把握する必要があります。そこで、被相続人の財産を管理していた者以外の相続人らは、生前の財産管理の実態を把握すべく、まずは通帳の開示を被相続人の財産を管理していた者に対して求めていくこととなります。
 今回の事例でも、相談者は兄に父の通帳の開示を求めることになりますが、兄が素直に応じるか分かりません。もし兄が通帳の開示を拒否すれば、相談者が自ら調査することになるでしょう。
 この場合、預金残高証明書、取引明細表などを銀行等の金融機関に照会することになります。もしどの金融機関に被相続人の口座が存在するのか不明であれば、被相続人の生活圏内の各金融機関に照会を行うこととなるでしょう。自宅や昔住んでいた場所、職場の近くの金融機関に口座があることは多く見られます。金融機関に照会を行う際には、被相続人が死亡したこと、依頼者が相続人であることなどの証明が必要となるため、戸籍謄本などを用意しておく必要があります。しかし、金融機関によって必要な書類や手続も変わるので、足を運ぶ前に電話等で問い合わせると良いでしょう。ただ、預貯金の調査には時間も手間もかかります。特に被相続人の口座をすべて把握していない場合にご自身で調査しようとすると、莫大な労力がかかるでしょう。弁護士事務所の中には、遺産の調査だけでも受任をしているところがあるので、利用することをお勧めします。

⑵ 使途の調査

 通帳の写しや取引履歴の入手後、入出金の明細をつくり、各支出についての使途を調査します。調査方法としては、被相続人の財産を管理していた者に対して領収証の提出を求めることになります。稀にすべての支出について領収証が提出され、不正使用がなかったことが判明することもありますが、多くの場合は領収書が存在しなかったり、一部、使途不明金が発生することになるでしょう。
 この調査結果を踏まえて相手方と交渉を行うことになりますが、交渉がまとまらない場合、遺産分割調停に持ち込まれることもあります。

2 払戻しの使途

 被相続人の預貯金払戻しの用途としては、主に以下のものがあります。

⑴ 被相続人の療養、看護

被相続人の預貯金が払い戻され、これが被相続人の療養・看護(生活費や医療費など)に使われている場合は、特に問題のない支出です。被相続人の同意があれば委任関係、被相続人の同意がなくても事務管理として、財産を管理する子が適切に支出したことになるため、この点は特に問題とならないでしょう。

⑵ 特別受益

 被相続人の預貯金の払戻しが、被相続人の同意の下、財産を管理する子に婚姻や生計の資本として贈与された場合、贈与を受けた者は特別受益にあたると主張することが考えられます。
 この主張が正当なものであれば、遺産分割調停の中で解決すべき問題となります。

⑶ 不法行為、不当利得

被相続人の財産を管理する者が、被相続人の了解なくして被相続人の預貯金を勝手に払い戻し、自己の用途に使っている場合、不法行為としての損害賠償請求や、不当利得としての返還請求の問題となります。
そこで、他の相続人は、被相続人の損害賠償請求権ないし不当利得返還請求権を、金銭債権として相続したことを主張して、財産を管理する者に対して請求していくこととなります。
このようなケースでは、遺産分割調停とは別個の問題として、切り離して、地方裁判所における損害賠償請求訴訟等として解決することもあります。この訴訟においては、被相続人の生前の収支の明細、子の財産の管理状況、使途の立証、領収証の有無、被相続人の意思の推認、子の生活状況等が問題となることが多いでしょう。

⑷ 使途不明

被相続人の預貯金が払い戻されているが、その使途が不明なときや、その払戻しが被相続人の意思に基づいているのか否か不明な場合、遺産分割調停ではこれを考慮することができません。この場合、現在ある預貯金を前提として、遺産分割調停を進めざるを得ないと考えられます。

3 まとめ

 今回は、生前の財産不正使用が疑われる場合の対処法についてご説明しました。
親の面倒をみる場合、通帳や印鑑を預かり、そこから親の生活費等を支出することになりますが、支出の都度領収証を発行してもらわない方もいるでしょう。しかし、親の死後、領収証がなければ相続人間で不信の原因となり、トラブルを招きかねません。親の財産を管理する場合には、必ず領収証を発行してもらうよう注意してください。また、適正に管理していたにも関わらず、他の相続人から財産の横領だと主張されてしまうリスクは誰にでもあるため、そのような紛争を避けるために生前の財産管理段階から成年後見人制度を活用することも効果的です。

また、逆に他の相続人が生前に財産を不正使用していたかもしれないと疑う場合には、預貯金の調査が不可欠です。ご自身での調査は、時間も手間もかかりますので、弁護士事務所に依頼すると良いでしょう。もし不正使用が発覚した場合には、その後の訴訟においても引き続き依頼するとスムーズです。

 

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