遺産相続

ペットに遺産をあげるという内容の遺言も作れる?(負担付遺贈)

2017.08.29
遺産相続|弁護士ニュース

ペットに遺産をあげるという内容の遺言も作れる?

<相談内容>
私は両親も夫も亡くし,子どもはいません。現在はペットの柴犬を可愛がって暮らしていますが,私が死んだら,誰が柴犬のお世話をしてくれるのか,心配でたまりません。そこで,私が死んだら愛犬に私の財産を全部あげるという内容の遺言書を作りたいと考えているのですが,可能でしょうか。私には兄が一人いますが,兄とは仲が悪いので財産を渡したくありません。

 この相談者が遺言書を作成せずに亡くなった場合,法律上,兄が相続人となり,相談者の財産を全て相続することになります。そこで,兄に財産を残したくなければ,遺言書を作成しなければなりません。今回は,どのような内容を遺言に記載することができるのかご説明していきます。

1 遺言事項

 遺言書と題していても,書いた内容すべてに法律上の効力が認められるわけではありません。法律上,遺言によって効力が生じるもの(これを,「遺言事項」といいます。)は制限されています。遺言事項には,以下のものがあります。

⑴ 相続の法定事項の修正に関する事項

・推定相続人の廃除,廃除の取消し
・祖先の祭祀主宰者の指定
・相続分の指定
・特別受益の持戻しの免除
・遺産分割方法の指定
・遺産分割の禁止
・遺産分割における担保責任に関する別段の定め
・遺贈の減殺方法に関する別段の意思表示

⑵ 相続以外の財産処分に関する事項

・遺贈
・相続財産に属しない権利の遺贈について別段の意思表示
・財団法人設立のための寄付行為
・信託の設定
・生命保険金の受取人の変更

⑶ 身分関係に関する事項

・認知
・未成年後見人の指定
・未成年後見監督人の指定

⑷ 遺言の執行に関する事項

・遺言執行者の指定

2 付言事項

 法律で定められていない事項については,たとえそれが遺言書や相続人,受遺者にとっては重要な事柄であったとしても法的効力は持ちません。
 遺言の中には,しばしば「子どもたちは清く正しく生きるように。」「家族みんなで仲良く協力して暮らすように。」「葬儀は親族だけで行い,遺骨は海に撒いて下さい。」などの記載が見られます。これらに法律上の効力は発生しませんが,被相続人が最後に残した意思として相続人から尊重され,望みが叶うということはあるでしょう。

3 ペットに遺産を残すことができるか

 冒頭の相談事例のように,ペットに財産を残したいと考える人が増えてきているようです。しかし,財産に関する権利の主体になることができるのは,人あるいは会社などの法人に限られています。そのため,ペットに財産を残すことはできません。また,実際にペットにお金をあげても,ほとんど意味はないと考えられます。
 そこで,ペットに財産を残したいという意思を実現するためには,ペットお世話をしてくれる人に財産を遺贈するという方法があります。遺言の中で,受遺者に対して一定の法律上の義務を負わせた上で遺贈を行う(これを,「負担付遺贈」といいます。)ことができるので,これを利用すると良いでしょう。なお,負担は相続人に負わせることも可能です。遺言には「1. Aに○○を遺贈する。 2. Aは,遺言者の愛犬(名称:モモ,年:5歳,体毛の色:茶,犬種:柴犬,特徴:左耳に切り傷)をその生涯にわたって介護扶養すること。」などと記載することになります。もし遺贈した人がペットの世話をしてくれなかった場合には,遺贈を取り消すことができる可能性がありますが,遺言者の死後の問題なので,遺言執行者を指定し,取消しの手続等も委ねた方が良いでしょう。
 また,相手は負担付遺贈を受けることも拒否することも可能なため,絶対にペットの世話をしてくれるとは限りません。そこで,生前に負担付死因贈与契約を締結する方法も考えられます。

4 まとめ

 今回は,遺言でなし得る行為についてご説明しました。遺言事項には制限がありますが,法的効力を持たない事柄についても記載することは可能です。ご家族に感謝の気持ちや願いを伝えたい場合には,遺言に残すと良いでしょう。
 また,今回ご説明したように,ご自身の死後,ペットが心配という方には,負担付遺贈がお勧めです。万が一負担が実行されなかったときのために,遺言執行者を指定することを強くお勧めします。もちろん,負担付遺贈をしないような遺言でも,スムーズな手続を行うためには遺言執行者の指定が重要です。遺言執行者は家族や友人など,誰でもなることができますが,弁護士事務所を指定するのが最善だと考えられます。相続は大きな金額の問題であり手続が複雑なため,専門家である第三者が頼りになり,弁護士個人よりも,法人として弁護士事務所を執行者として指名する方が確実です(個人を指名すると,相続発生前にその個人が亡くなる恐れもあるからです)。
 また,遺言を利用する形ではなく,信託を利用する形もございます。どちらかと言えば,ペット信託の方がペットの生活を守るのに長けているでしょう。当事務所では,ペット信託も対応できますので,ぜひご相談ください。ペット信託については,別の機会に詳しくお話したいと思います。
 遺言を作成したい場合には,早めに弁護士に相談し,ご自身の希望に沿った遺言を作成してもらうと共に,遺言執行者になってもらうことをお勧めします。

 

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