遺産相続

お金を貸している相手に遺留分があるみたい。何かできる?

2017.08.28
遺産相続|弁護士ニュース

お金を貸している相手に遺留分があるみたい。何かできる?

<Aさんの相談>
先日,友人から1000万円貸してくれと頼まれました。一旦断ったのですが,友人は「実は俺の父親には1億円の資産があるんだ。相続人は俺と兄しかいなくて,父親は兄に全部遺産を渡す遺言を書いているらしいけど,俺には遺留分っていうのがある。調べたら2500万円は遺留分としてもらえるらしい。この遺留分をお前にあげるから,お金を貸してくれ。」と言ってきました。この話が本当ならお金を貸してもいいかなと思うのですが,遺留分って人に譲渡することができるのでしょうか。

 債務者に相続が見込まれる場合,遺留分を担保にお金を貸したいと思う方も多いでしょう。今回は,遺留分の譲渡や差押え,代位行使についてご説明していきます。

1 遺留分の譲渡

⑴ 相続開始前

 相続開始前において,特定の贈与等に対する遺留分減殺請求は,将来の相続財産の変動によって左右され,相続が開始するまではその発生自体不確定ということになります。したがって,相続開始前は将来の期待的利益にすぎず,権利とはいえません。つまり,相続開始前に遺留分を譲渡することはできません。
 この相談では,Aさんは友人から,友人父が死亡する以前に遺留分の譲渡を受けることはできないということになります。

⑵ 相続開始後

 これに対し,相続開始後の具体的な遺留分減殺請求権は,譲渡することが可能です。ただし,遺留分を行使するという相続人の意思が表明された後は,遺留分権利者は,不動産,動産,債権等の個々の対象財産に対して持分を取得することになります。遺留分を行使するという意思表示には,遺留分減殺請求権の譲渡の意思表示も含まれます。したがって,遺留分権利者が遺留分減殺請求権を譲渡し,債務者(受遺者)への譲渡通知がなされた時点で,譲受人は対象財産の共有持分等を取得することになります。
 この相談の場合,友人父の死亡後,Aさんが友人から遺留分の譲渡を受け,その通知が友人兄になされると,Aさんは友人父の相続財産について共有持分を有することになります。

2 遺留分の差押え

<Bさんの相談>
私は友人にお金を貸していますが,返済期限を過ぎているのになかなか返してくれなくて困っています。最近,友人の父親が亡くなったと聞きました。友人のご実家は裕福だったので,友人にも遺産が入るのではと思って聞いてみたところ,「父は,母に全部相続させるという遺言を残していた。俺もそれで構わないと思っている。」と言われました。しかし,友人には遺留分があると思います。お金を貸している私がこの遺留分を差し押さえることはできないでしょうか。
 遺留分減殺請求権を行使するかどうかは,遺留分権利者の自由な意思決定にゆだねられており,他の人が行使することはできません(このことを,遺留分減殺請求権は行使上の一身専属権である,といいます。)。したがって,債権者は遺留分減殺請求権を差し押さえることはできません。
 ただし,遺留分減殺請求権を既に行使して,遺留分権利者に個々の財産が帰属した場合には,その財産の差押えをすることは可能です。
 この相談でも,もし友人が友人母に遺留分減殺請求をして財産を取得した場合には,Bさんはその財産を差し押さえることができますが,友人が遺留分減殺請求を行使する気がない以上,Bさんは差し押さえることはできないでしょう。

3 遺留分と債権者代位権

<Cさんの相談>
私は友人に100万円を貸し,その支払いを命じる判決が確定しました。友人は「もうすぐ父の遺産が入るから待ってほしい。」と言っていましたが,友人の父親は,遺産をすべて友人の母親に相続させる旨の遺言を残していました。私は,友人の有する遺留分減殺請求権を代位行使できるでしょうか。
 債権者は,その債権を保全するため,債務者の有する権利を代わりに行使できるという制度があります。ただし,これはどのような場合でも行使できるものではなく,相続人が遺留分減殺請求権を行使しない場合に,相続人の債権者がこれを代位行使できるかという問題があります。
 この問題について,最高裁平成13年11月22日判決は,遺留分減殺請求権は,行使上の一身専属性を有すると解するとして,遺留分権利者が,これを第三者に譲渡するなど,権利行使の確定的意思を有することを外部に表明したと認められる特段の事情がある場合を除き,債権者代位の目的とすることができないと解するのが相当である,と示しました。また,債務者たる相続人が将来遺産を相続するか否かは,相続開始時の遺産の有無や相続の放棄等によって左右される極めて不確実な事柄であり,相続人の債権者は,これを共同担保として期待すべきではないから,このように解しても債権者を不当に害するものとはいえない,としています。
 Cさんの場合,友人は,「遺産が入るから待ってほしい」旨発言していますが,遺留分を行使することを確約したわけではなく,遺留分減殺請求権行使の確定的意思を外部に表明したとはいえないため,Cさんの代位行使が認められるのは困難でしょう。

4 まとめ

 今回は,債務者が遺留分を有していた場合に,遺留分の譲渡,差押え,代位行使ができるかというテーマについてご説明しました。このようなケースでは,当事者関係が複雑になりやすく,ご自身で交渉を進めるのは困難です。また,相続をした人が,何も知らない第三者に相続財産を譲り渡してしまう可能性もあります。債務者が遺留分を有しているという場合には,できるだけ早めに弁護士に相談しましょう。

 

困ったときに頼りたい弁護士ニュース