後見

後見制度支援信託について

2021.03.15
後見制度支援信託について

近年、後見業務において後見制度支援信託が利用されるケースが増加しています。
後見制度支援信託はどのような制度なのでしょうか?

今回は、後見制度支援信託について説明します。

1.後見制度支援信託について

後見制度支援信託とは、成年被後見人又は未成年被後見人の財産のうち、日常生活において必要十分な金銭を預貯金等として後見人が管理し、残る金銭を信託銀行等に信託するといった制度です。

後見制度支援信託は主に親族が後見人となるケースにおいて、後見人による財産の使いこみ等の不正行為を防止することを目的に設立されており、信託された信託財産については、後見人であっても家庭裁判所からの指示書がなければ払戻手続きは出来なくなっています。

従前は、後見制度支援信託を利用していない場合、家庭裁判所は後見業務に不正が無いかを、後見人が作成した定期報告書を基に事後確認していましたが、後見制度支援信託では信託財産を払い戻す際には家庭裁判所の指示書が必要になることから、事前に不正を防ぐことが出来るようになりました。

2.後見制度支援信託の利用について

後見制度支援信託を利用するには、後見開始申立時に後見制度支援信託の利用を検討している旨を申し出ます。

その後、家庭裁判所が生活状況、財産等の事情を総合的に考慮し、後見制度支援信託の利用を検討すべきと判断した場合、親族後見人と共に、弁護士、司法書士等の専門職を後見人として選任します。専門職を後見人に選任するのは、信託契約締結などをサポートするためです。

その後、後見人が改めて財産調査等を行ったうえで、後見制度支援信託の利用が必要だと判断した場合、家庭裁判所へその旨の報告書を提出し、家庭裁判所が報告書を確認します。

家庭裁判所も後見制度支援信託の利用が必要であると判断した場合には、家庭裁判所が信託銀行等と信託契約を締結する旨の指示書を後見人に発行し、後見人は指示書を基に信託契約を締結する流れとなります。

3.後見制度支援信託の利用が難しいケース

後見制度支援信託が難しいケースとして主に2つの理由が考えられます。

1つ目の理由は、信託銀行等の利用には一定の財産が必要になる点です。
信託銀行等は、基本的には1000万円からの利用を前提としていることが多いため、信託を利用しようとする金額が1000万円未満の場合には後見制度支援信託の利用は難しくなります。

また、財産の総額が1000万円以上の場合であっても、後見制度支援信託の信託財産は金銭に限定されているため、不動産、株式などの財産が多く、預貯金が1000万円に満たない場合にも基本的には利用が出来ません。なお、この様な場合に、不動産、株式等を換価して、後見制度支援信託を利用できるだけの金銭を準備する行為は推奨されていません。

2つ目の理由としては、遺言書などで事前に成年被後見人の意思が示されている場合です。
後見開始時点で遺言書がある場合には、成年被後見人は現在の財産を基に相続を望んでいることを推定されることから、信託へ財産を移転させて財産状況を変動する可能性を高めることは、成年被後見人の意思に反すると考えられていることから、後見制度支援信託の利用は難しいと考えられています。

また、後見制度支援信託の利用は後見に限られており、保佐、補助では利用することが出来ません。後見に限られている理由としては、後見は被後見人の財産の管理について包括的な代理権を有しているのに対し、保佐、補助では特定の範囲の代理権しか有していないためです。

よって、後見制度支援信託の使用を検討している方も、本人が後見相当に該当する状態であるか医師の診断を受け、弁護士、司法書士の専門家の意見も聞いたうえで手続きを進めることが望ましいと思われます。

加えて、成年被後見人を賃貸人とする賃貸不動産が多数ある場合、親族間に紛争がある場合など、財産管理に専門的な知識、経験を要するとき、後見人に第三者性が求められているときには、後見制度支援信託の利用は行わずに専門家が後見人となることが推奨されています。

これは、後見制度支援信託が財産保全に役立つものの、専門性が求められる財産管理の機能は期待されていないこと、また、親族後見人に専門的な知識、経験、第三者性を求めることが難しいためです。

以上の事情に該当する場合は、後見制度支援信託の利用が難しいことを覚えておきましょう。

4.まとめ

今回は、後見制度支援信託について説明しましたが制度の概要についてご理解いただけたでしょうか?

この制度は、度々問題になる後見人による被後見人の財産の横領等の不正を事前に防ぐには有効な制度であることをご理解いただければと思います。

しかしながら、この制度を利用するには、信託を利用できるだけの財産を有していること、被後見人の意思に反さないことなどの一定の制限があるため、利用を検討される方は事前に専門家へ相談の上、しっかりと準備を整え手続きを進めましょう。