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後見制度ってなあに?認知症と法的対策

2017.06.05
後見問題|弁護士ニュース

日本における65歳以上の高齢者人口は約3,300万人(平成26年9月15日現在)で,総人口に占める割合は25.9%となり,人口,割合共に過去最高となりました。年を取ってくると誰でも記憶力は悪くなってくるものですが,「認知症になったらどうしよう…。年金の管理はどうしたらいいだろうか,介護は…」などと心配している方も多いのではないでしょうか。今回は,認知症の高齢者等,判断能力が不十分となった方の財産保護のための制度である成年後見制度についてお話ししたいと思います。

1 後見制度ってなあに?

認知症が進んでくると「この取引が自分にとって有利だろうか?」といった判断をするために必要な能力がどうしても不安になってきます。こういった能力が不十分になった人(以下では本人といいます。)を法律的に保護するために作られたのが,成年後見制度です(知的障害や精神障害をもつ人も対象になっています。)。
 成年後見制度には,法定後見制度と任意後見制度の2種類があります。
法定後見制度は,判断能力が不十分になってから利用するもので本人だけでなく,まわりの人も申立てすることができます。他方で,任意後見制度は,,判断能力が不十分になる前に,本人が手続きをしておくものになります。それでは,以下,,概略をご説明しておきます。

(1) 法定後見制度

法定後見制度は,読んで字のごとく法律による後見制度です。判断能力の欠如が著しい順に成年後見,保佐,補助の3つがあり,これらのいずれにあたるかについては医師による診断などを踏まえたうえで家庭裁判所が判断することになります。
家庭裁判所が,成年後見が相当であると判断すれば成年後見人を,保佐が相当であると判断すれば保佐人を,補助が相当であると判断すれば補助人を選びます。もっとも,,ご家族で争いがない場合には,ご家族が後見人等に就くことも可能です(本人の資産状況などにより,ご家族が必ずなれるわけではないのでご注意ください)。なお,事案によっては,後見人,保佐人,補助人が不適正に仕事をしないように監督するため裁判所が後見監督人,保佐監督人,補助監督人を選ぶことがあります。
それでは,各制度がどのようなものか簡単に見てみたいと思います。

〈成年後見〉
本人について成年後見が相当と判断されたのであれば,本人は食料品などの日用品の購入等の場合を除いて,一切の法律行為ができなくなります。これは,本人に財産上の損害を与えないために不動産売買などの法律的な行為をできなくするだけで,散歩であるとか食事をとるといった事実上の行為は何ら制限されることはありませんのでご安心ください。
上でもお話ししたように,本人は法律上の行為を限定した範囲でしか行えないので,成年後見人は本人の代わりに財産の管理を行うことになります。
よって,成年後見人は,本人の財産を管理し,本人に代わって財産に関するすべての取引や契約を行うことができ,本人が行った日常生活に関する以外の取引は全て取り消すことができます。なお,後見人だからといって介護などの行為をする必要はありませんが,してはいけないわけではないので後見人として本人の財産管理を行い,親族として介護を行うということも可能です。
ちなみに,某家庭裁判所では,痴呆の程度を測るテスト(長谷川式スケール)の点数が30点満点中10点以下であれば成年後見相当,11点から15点であれば保佐相当,16点から20点であれば補助相当,21点以上であれば正常であるため成年後見申立ては却下するという運用をしておりますので,ご参考にされてください。

〈保佐〉
本人について保佐が相当と判断されたとしても,後見と異なり,本人は原則として法律行為を行うことができます。保佐と判断された場合には,まだ判断能力が一定程度あるということですのでその意思に配慮したものです。
しかし,本人に財産上の損害を与えてしまっては本人の福祉が害されてしまうことになるため,一定の重要な財産の処分行為については,,保佐人の同意を必要としています。たとえば,不動産の売買については保佐人の同意が無ければできず,本人が勝手にした場合には取り消すことができます。
また,保佐人は,「特定の法律行為」(たとえば預貯金の払い戻し,金銭の貸付など)については,家庭裁判所から認められれば,本人を代理して契約を結ぶことができます。ただし,この代理権付与には本人の同意が必要です。

〈補助〉
 本人について補助が相当と判断されたとしても,本人の判断能力は保佐の場合と比べてもさらに減退していないことになりますので,本人は法律行為を行うことができます。
しかし,この場合であっても本人に財産上の損害を与えてしまっては本人の福祉が害されてしまうことになるため,本人が望む一定の事項についてのみ,補助人が契約に同意を与えたり,契約の代理をしたり,もし不適切な契約をしてしまった場合はそれを取り消すなどして,本人を援助することができます。
なお,補助の申し立てをするには,本人の同意が必要ですし,補助人に同意権や代理権を与えることにも,本人の同意が必要です。

(2) 任意後見制度

任意後見制度は,本人に判断能力が不十分になる前に,将来にそなえて,誰に(知人,親族はもとより弁護士などの専門家に任せることも可能です),どのような支援(療養看護や財産管理など)をしてもらうか,あらかじめ契約を結んでおく制度です。公正証書による契約によって任意後見人を選んでおきます。この制度については,別の記事で詳しくご紹介します。

2 まとめ

家庭裁判所に後見人や保佐人,補助人を選任してもらうためには,家庭裁判所に「選任の申立て」を行う必要があります。申立ては,必要事項を記載した書面を裁判所に提出する形で行いますが,収入関係資料や財産関係資料等,沢山の添付書類を収集して申立てをする必要があるため,なかなか労力がかかる作業です。不備があると何度も補正をしなければならないため,その分選任の時期も遅れてしまいます。そのため,申立てをスムーズに行いたい方は,弁護士に手続きを依頼すると良いでしょう。
また,後見人には,基本的には親族の方もなることができますが,本人の財産が多いとき(各裁判所によって基準は異なりますが,例えば某家庭裁判所の場合は本人の保有流動資産が1500万円以上の場合には,専門家でないと後見人になれないとされています。)や,後見人になることについて他の親族が反対している場合は,親族の方は後見人になることはできず,裁判所が名簿に従って弁護士を選任することになります。
,なお,後見人を選任することについて,親族間で争いがない場合には,申立てをする段階で,自ら選んだ弁護士を後見人候補者として指定して申立てをすることができます。この場合,裁判所は,申立人が指定した候補者弁護士に特段問題がない限り,その者を後見人として選任します。後見人は,一度選任されると原則として本人が亡くなるまで本人の財産を管理するため,親族にとっては長い付き合いになります。そのため,候補者を立てて申立てができる場合には,ご自身がよく知っている信頼できる弁護士に,申立てを頼む際に,候補者にもなってくれるよう依頼されることをお勧めします。,
以上