離婚・親子問題

不貞と離婚~不倫がばれても離婚できる?~

2019.04.24

芸能人の不倫のニュースが話題になったり、身近でも不倫が原因で離婚をしたという人の話を聞くことがあると思います。

不倫をされて離婚を決意するというケースはよく聞きますが、不倫した側から、交際相手と再婚したいなどの理由で離婚を申し出ることはできるのでしょうか。いわゆる不倫のことを法律用語で「不貞」といいます。今回は、不貞と離婚にまつわる問題についてご説明します。

1.離婚原因

日本では夫婦で話し合って離婚の合意をし、離婚届を提出する協議離婚が一般的です。しかし、どちらか一方が離婚に反対している場合や、慰謝料などの離婚条件をめぐって合意が成立しない場合には、家庭裁判所での離婚調停を経て、それでも決着がつかなければ離婚判決をもらって離婚するしかありません。

裁判離婚が認められるのは、法律上、次のいずれかに該当する場合に限られます(民法7701項)。

①配偶者に不貞な行為があったとき

②配偶者から悪意で遺棄されたとき

③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき

④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき

⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

このうち①の不貞とは、夫婦間の貞操義務に反すること、不倫のことです。したがって、婚姻中に配偶者以外の異性と性交渉をした場合は「不貞」にあたり、配偶者から離婚裁判を起こされ裁判所が不貞を認定すると、離婚判決が出されます。

なお、特定の異性とメールやSNSで親密なやりとりを行ったり、継続的に食事やデートに行く関係にあったとしても、性交渉に至っていない場合には「不貞」にはあたりません。

ただし場合によっては、この事実を知った配偶者がショックを受け、⑤の「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当する可能性はあります。

2.有責配偶者からの離婚請求

では反対に、不貞をした側から離婚を求めることはできるでしょうか。これは「有責配偶者からの離婚請求」と呼ばれる問題です。有責とは、夫婦関係が破綻するに至った原因を作り出した責任があるということです。

かつての最高裁判所は、有責配偶者からの離婚請求を認めてしまうと、相手配偶者は踏んだり蹴ったりであるという理由で離婚を認めませんでした(最判昭和27219日)。しかしその後最高裁判所は方針を変更して、一定の要件の下では有責配偶者からの離婚請求を認めるようになりました(最大判昭和6292日)。

一定の要件とは、

①別居期間が長期間に及ぶこと

②未成熟の子どもが存在しないこと

③離婚することによって配偶者が精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態にならないこと

3要件です。

①は、5年程度以上の別居期間が必要とされるのが一般的です。したがって、再婚するために離婚判決を勝ち取るには、相当長い期間、配偶者と別居しておかなければなりません。

②の未成熟の子どもとは、未成年者という意味ではなく、まだ経済的に独立していない子どもを指します。ただし、未成熟の子どもがいても、有責配偶者からの離婚請求が認められる場合があります。例えば、高校生の子どもがいても、3歳のときから一貫して妻が育て、夫は生活費の送金を続けてきたことから、未成熟の子どもがいることは離婚請求の妨げにならないとした判例があります(最判平成628日)。

③は、様々な事情が考慮されます。裁判例の中には、約13年間もの長期間別居しているにもかかわらず、有責配偶者からの離婚請求を認めなかったものがあります(東京高判平成91119日)。

この事案は、夫が不貞をして、妻とは約13年間も別居生活を続けていましたが、夫は月額約80万円の給料を得るなどの高額所得者でありながら、妻子(子は高校生と中学生)には少額を送金するのみで、やむを得ず妻が実家から援助を受けていたという事情がありました。

このような状況で離婚を認めてしまうと、ますます妻子の生活が苦しくなってしまうおそれがあることが考慮されています。

これらの3要件に照らしてみると、不貞を行った有責配偶者からの離婚請求が認められるのは、相当にハードルが高いことがわかります。

3.婚姻が破綻した後の不貞

一方、夫婦関係が破綻した後に不貞が行われた場合には、前述の考え方は当てはまらず、不貞を行った者からの離婚請求であっても離婚が認められます。なぜならこの場合は、不貞が原因となって夫婦関係が破綻したのではなく、ほかの理由で既に破綻しているからです。

とはいえ、早く離婚したいからといって自ら積極的に夫婦関係を破綻に至らせると(たとえば生活費を全く家に入れない、暴力をふるって妻を家から追い出すなど)、このこと自体が理由となって、不貞以外の理由で有責配偶者と認定されてしまい、離婚請求が認められないことになってしまいます。

どういう状態になれば夫婦関係の「破綻」といえるのでしょうか。これは一概には言えません。例えば夫婦仲が悪く口論ばかりしている、寝室が別々、性交渉がないという事情があってもこれだけではまだ破綻とは言えません。

夫婦関係が破綻したか否かは、離婚の意思が相当に固く、修復する気持ちが皆無であるといった内心の事情のほかに、ある程度の長期間別居しているといった外形的な事情を総合的に考慮して判断することになります。家庭内別居という夫婦もいますが、同じ屋根の下で生活している以上、それだけでは夫婦関係が破綻したとは言いにくいでしょう。

4.まとめ

裁判実務では、不貞を行った有責配偶者からの離婚請求はなかなか認められないのが実情です。しかし、不貞相手と再婚したい等、どうしても離婚したいと考える方も多いでしょう。その場合、有責配偶者としては、離婚裁判では敗訴してしまうリスクが高いので、裁判を回避しなければなりません。

つまり、できるだけ話合いで離婚するように、協議離婚または調停離婚で決着をつける必要があります。そのためには、高額の慰謝料や財産分与に関する相手方の要求をそのまま受け入れるといった厳しい選択を迫られることになるかもしれません。慎重に行動する必要があるでしょう。