離婚・親子問題

親権~親権者はどうやって決める?~

2019.04.30

離婚するにあたり子どもがいる場合、子どもの親権はどちらが持つかということで対立するケースは非常に多く見られます。
親権の問題は、慰謝料や養育費、財産分与などのお金の問題とは根本的に異なり、お金に代えられない子供との繋がりの問題ですので、紛争が激化しやすいものです。
そこで、今回は、父母の協議で親権者が決まらなかった場合に裁判所はどういう基準で親権者を指定するのかという点を中心にご説明します。

1 親権とは

親権とは、未成年の子どもに対する、父母の養育者としての立場における権利義務の総称です。その効力は、子どもの身上に関する権利義務、子どもの財産についての権利義務の双方に及びます。あくまで未成熟な子どもを監督する権利義務ですので、子どもが成人すると親権はなくなります。

さて、親権は、父母の婚姻中は父母が共同して行います(民法818条1項)が、父母が離婚する際には、必ず父母の一方を親権者と定めます(民法819条1項)。離婚の合意ができても、親権者の指定について協議が調わないときは、離婚届を提出しても受理されません。

裁判離婚の場合は、判決で裁判所が父母の一方を親権者と定めるか(民法819条2項)、裁判上の和解において父母の一方を親権者と定めます。
離婚の際に親権者となった者がその後再婚しても、親権者であることには変わりません。

父母の離婚後、親権者に指定されなかった親は、親権者としての権限を全く持たないことになります。つまり、子の進学など重要な局面においても、法的には発言権を持ちません。
したがって、子どもの親権者となることは重要な意味を有します。そのため、離婚協議の際には、やはり親権に関する争いがなかなか絶えません。

ただ、必ずしも子どもとの関わり合いとは親権に限定される訳ではありませんので、親権だけにこだわるのではなく、子どもの幸せを最優先に考えるようにしましょう。

2 親権者指定の基準

では、裁判所は、どのような基準で親権者を指定するのでしょうか。これは、子の利益に合致することに尽きます(民法766条1項)。

子の利益に合致するか否かを判断するにあたっては、父母側の事情(監護に関する意欲と能力、健康状態、精神的・経済的家庭環境、居住・教育環境、子に対する愛情の程度、従来の監護状況、実家の資産、親族・友人の援助の可能性など)や、子の側の事情(年齢、性別、心身の発育状況、従来の環境への適応状況、環境の変化への適応性、子の意向など)を比較考量しながら決定されています。特に重視される事情には以下のものがあります。

① 現状の尊重(継続性)

変更すべき特段の事情がない限り、現に子の監護を行っている親権者が引き続き監護すべきであるという考え方です。実務では、この基準が優先されているように思われます。すなわち、子の虐待などが認められるケースを除けば、現状を尊重することが基本原則とされ、そのうえで、現状を覆すべき特段の事情があるか否かを審理するのが一般的です。

② 母親の優先

乳幼児については、特別の事情がない限り、母親が優先されるべきであるという考え方です。母親が現に乳幼児を監護しているケースでは、①②をともに満たすため、よほどの事情がない限り母親が親権者に指定されます。

③ 子どもの意思の尊重

子どもが15歳以上であるときのみならず(家事事件手続法152条2項・169条2項)、15歳未満であっても、できるだけ子どもの意思は尊重されるべきであるという考え方です。
実務では、おおむね10歳以上の子の意思が尊重される傾向にあると言われています。ただ、子どもは現在育ててもらっている親に嫌われないよう気を遣った発言をする傾向があるため、子どもの発言を鵜呑みにすることはできません。
子どもの意思を確認する際には、発言の字面だけでなく、その発言が真意に基づくものか否かを態度や行動等を総合的に見ながら判断しています。

④ 兄弟姉妹の不分離

兄弟姉妹は可能な限り同一人によって監護されるべきであるという考え方です。もっとも、子の年齢が上がるにつれて、兄弟姉妹の不分離の基準は重視されない傾向にあります。
裁判例でも、複数の未成年の子はできるだけ共通の親権に服せしめる方が望ましいが、ある程度の年齢に達すれば、その望ましさは必ずしも大きいものではないとし、15歳の長女の親権者を父、12歳の長男の親権者を母に指定したものがあります(東京高判昭和63年4月25日)。

離婚原因となった事情、たとえば不貞行為や暴力行為などが親権者指定において考慮されるかという問題があります。

不貞行為は倫理的に非難されるものの、直ちに親権者として不適格であるとは言えないと解されています。
暴力行為については、子の目の前で配偶者に暴力をふるうなどの事実があれば、子の健全な育成に悪影響を与える可能性が大きいので、親権者としての不適格性につながる可能性があります。

3 監護権とは

親権とは別に、子どもを現実に養育する権限という概念もあり、これを「監護権」といいます。離婚の際に親権者に指定されなかった親を監護権者と定めることもでき(民法766条1項・2項)、その場合は親権と監護権が別々の者に帰属することになります。
世の中には、親権はなくても、子どもと日々の生活を共にできれば十分だと考える親もいるでしょう。
実務では、親権者の指定について双方が対立しており、離婚がなかなか成立しない場合に、窮余の一策として、親権者と監護権者を分けて、妥協点を見出すことがあります。

しかし、親権者と監護権者を分けた場合、進学などの手続や各種申請などの際に親権者の協力が必要となるため、監護権者はその都度親権者に連絡を取り、親権者の署名・押印をもらわなければならず不便です。
しかも、けんか別れした間柄ですから、親権者の協力が得られるとも限りません。
このことが原因となって、元夫婦が紛争を再燃させ、子どもがその対立に巻き込まれる恐れもあります。
したがって、親権と監護権を別々の者に帰属させることは、あまりお勧めできません。離婚の実務でも、親権者と監護権者を分けることはめったに行われません。

4 親権者の変更

未成年の子どもについては、父母が離婚する際に一方の親が親権者に指定されていますが、その後の事情の変化により、他方の親が親権者となる方が良い場合があります。
そのため、「子の利益のため必要がある」ときは、親権者を変更することができます(民法819条6項)。

親権者の指定は当事者間の協議ですることができますが、親権者の変更は、必ず家庭裁判所の調停または審判を経なければなりません。
そして、子どもが15歳以上のときは、審判前に必ず子どもの陳述を聴かなければなりません(家事事件手続法169条2項)。

しかし、子どもが親権者から虐待を受けている場合のように、子どもを保護すべき緊急の必要性があるケースもあります。
このような場合には、審判前の保全処分を申し立てて、審判の結論が出る前に緊急の措置として、子どもの引渡しを求めることもできます(家事事件手続法175条1項)。

親権者の変更の基準は、親権者の指定の基準とは異なります。これは、親権者による監護の実績があるためです。
そのため、親権者の変更においては、父母双方の事情の相対的な比較考量のみならず、父母の一方による実際の監護の実績を踏まえて、変更すべき事情の有無を検討します。

ただし、親権者を変更するということは、子どもの現在の生活環境を変更するわけですから、変更する必要性が相当程度高くないと変更は認められません。

また、離婚によって子どもの単独親権者となった父または母が再婚し、再婚相手が子どもと養子縁組をしたために、子どもが実親と養親の共同親権に服している場合には、他方の実親は親権者変更の申立てができないとされており、注意が必要です。

5 まとめ

離婚の合意はしていても、親権者の指定についての協議が調わないことが原因となって、協議離婚が成立しないケースが多く見られます。
逆に、中には早急に離婚を成立させたいあまり、とりあえず親権については譲り、離婚した後に親権者を自身に変更すれば良いと考える方もおられるかもしれません。

しかし、将来親権者を変更することは決して容易ではありません。離婚の際には不本意に親権を譲ってしまわないよう、慎重に検討する必要があります。

そして何よりも、自分の子どもに対する愛情も踏まえた上で、子どもにとって最も幸せな人生を送れる選択肢を選ぶように心掛けましょう。