離婚・親子問題

離婚と子供の問題―子供の戸籍と氏―

2019.07.11

子供がいる夫婦が離婚したとき、離婚後の子供の戸籍、氏はどうなるのでしょうか?
今回は離婚後の子供の戸籍と氏、そして親権者が再婚した場合の子供の戸籍についてお話したいと思います。

1.子供の戸籍と氏について

夫婦が離婚をして、両親のどちらが子供の親権者になっても、子供の戸籍は変わりません。
例として、父を筆頭者とする戸籍に母、子供がいるケースで考えてみましょう。離婚に伴い、母が父を筆頭者とする戸籍から抜けて、新しい戸籍を作り旧氏に戻ったとします。この場合、子供は自動的に親権者である母の新しい戸籍に転籍するのでしょうか?

この場合、子供は、離婚後も夫を筆頭者とする戸籍に残り、子供の氏も妻の旧氏に変わることはありません。ただ、親権者は母となるため、子供の戸籍の記載事項に「父母が協議離婚をして親権者を母とする」という旨が記載されるだけなのです。

2.子供の戸籍と氏を変更する手続きについて

では、どの様にすれば子供を親権者の戸籍に入籍させ、氏を親権者と同一に出来るのでしょうか?

子供を親権者の戸籍に入籍させるためには、①子の氏の変更許可申立てを行い、子の氏を親権者の氏と同一にしたうえで、②親権者の戸籍への入籍手続きが必要となります。

なぜ、①子の氏の変更許可申立てを先に行う必要があるのでしょうか。それは、子供と親の氏が異なる場合、子供は親の戸籍に入ることができないからです。また、両親が離婚しても、子供の氏は当然には変更されません。離婚によって子供の親権者が旧姓に戻っても、子供の氏が変わるわけではありません。

そのため、母親が親権者であり旧氏に戻った場合には、親権者である母親と子供の氏が異なるということになります。また、親権者が婚氏続称の届け出をした場合であっても、「婚姻中の氏」と「続称の手続をとった氏」は、法律上、別の氏とされます。

ですので、呼び方は同じであってもその親と子の氏は異なることになります。そのため、親と子の氏を同一にする為には、「子の氏の変更許可」の申立てを行う必要があるのです。
以下では、各手続を具体的に見ていくことにしましょう。

《子の氏の変更許可申立て》
子供の氏を変更するには、子供の住所地を管轄する家庭裁判所に「子の氏の変更許可」を申し立てます。なお、申立人は子供自身になりますが、子供が満15歳未満の場合は法定代理人(通常は親権者)が申し立てを行います。申し立てを認める審判がなされれば、子の氏が変更されることになります。

《入籍届の提出》
次に子供の戸籍を親権者の戸籍へ入籍する手続きへと移行します。手続きの方法は、子の氏の変更許可の審判書の謄本等を添えて市区町村役場の戸籍係へ入籍届を提出します。ここでも、子供が満15歳以上であれば子供自身で手続きを行うことができますが、満15歳未満であれば、法定代理人(通常は親権者)が行います。

◎親権者でない場合は?
前述した通り、子供が満15歳未満の場合は、子の氏の変更許可の申立ては親権者(法定代理人)でなければ行うことができません。つまり、離婚時に親権者と監護者を分ける方法を選択した場合、看護者が子供の氏を自身と同一にしたいと希望しても、親権者ではないため、子の氏の変更許可の申立ては出来ないのです。

監護者と子供の氏を同一にするためには、親権者から子の氏の変更許可を申立てるか、親権者変更の調停・審判を申し立て、監護者を親権者とするしか方法はありません。

3.離婚後に生まれた子供の戸籍はどうなるの?

では、離婚後に生まれた子供の戸籍はどうなるのでしょうか。離婚した日から300日以内に生まれた子供は、民法772条2項に基づき婚姻中に懐胎した夫の子供であると推定されます。つまり、離婚後300日以内に生まれた子供は、実際には父親が違っていても前夫の子供と推定され、出生届を提出すると、嫡出子として前夫の戸籍に入籍することになります。
例外として、妊娠時期が離婚後である場合には、その旨を証明する「懐胎時期に関する証明書」を医師に発行してもらい、その証明書を添付して出生届を出す方法があります。

この場合には、子供の出生日が離婚後300日以内であっても、元夫以外を父とする出生届を受理してもらえますので、子供が元夫の戸籍に入ることもありません。
 では、子供が前夫の戸籍に入籍した場合に、子供の戸籍を前夫の戸籍から外すにはどのような手続きを行う必要があるのでしょうか。以下に説明致します。

《嫡出否認の手続き》
生まれてくる子供、あるいは生まれた子供が前夫との子供ではない場合、前夫が、子供又は親権を行う母の住所地の家庭裁判所家庭裁判所に「嫡出否認」の調停の申立てることになります。「嫡出否認」は調停前置主義が採られているため、まずは嫡出否認調停を申し立てることになります。また、申立ては母側から行うことはできず、戸籍上の父親である前夫が行う必要があるため、注意が必要です。

そして、調停で当事者同士が「前夫の子供ではない」と合意することができ、家庭裁判所が調査を行い、その合意が正当であると認めれば、合意に従った審判がなされます。その結果、前夫と子供との父子関係は否定されることになります。

この申立ては子供が生まれたことを知った時から1年以内にしなければなりません。また、嫡出否認の調停を申し立て、一度前夫が自分の子供であると認められると、再度「嫡出否認」の申立てをすることはできません。

《親子関係不存在確認手続きについて》
離婚後300日以内に生まれた子供であっても、夫が長期出張中であるなど、妻が夫の子供を妊娠する可能性がないことが客観的に明らかである場合には、相手方の住所地の家庭裁判所(例えば、母が前夫を相手方に申立てる場合は、前夫の住所地の家庭裁判所)に「親子関係不存在確認」の調停の申立てをすることができます。
この申立ては父母、実の父のみならず、子供自身も申立てをすることができ、摘出否認の申立てと違い、申立てる時期に制限はありません。

この場合も、当事者双方の間で、親子関係の不存在の合意ができ、家庭裁判所が必要な事実の調査等を行った上で、その合意が正当であると認めれば、合意に従った審判がされます。

以上の手続きを行い、子供の戸籍を前夫の戸籍から外した後は、2.で述べたように、子の氏の変更許可申立てを経て母親の戸籍への入籍手続きを行うことになります。なお、前夫と子供の親子関係が否定されたとしても、それだけでは父親が誰であるかが確定していません。法律上も実の父の子供にするためには、実の父に認知してもらう必要がありますので、注意が必要です。

また、離婚した日から300日を過ぎて生まれた子供は「非嫡出子」として母親の戸籍に入ることになります。もし、子供が前夫の子供である場合は、前夫に対し認知請求をするという流れになります。

4.再婚した場合の子供の戸籍はどうなるの?

前夫と離婚後、子供を自分の戸籍に入れている母親が再婚した場合、母親と再婚相手は新しい戸籍を作ることになります。しかし、子供は母親と再婚相手の新しい戸籍に入るのではなく、再婚前の母親の戸籍に入っているままになります。そして、再婚により母親の氏が変わっても子供の氏は変わりません。

子供を母親と同じ戸籍に入れるためには、再婚相手と子供の養子縁組をする必要があります。養子縁組をすると、子供は母親と再婚相手の戸籍に入り、同じ氏になります。
そして、子供は再婚相手の嫡出子と同じ身分を得ることになるので、養父の財産も相続できるようになります。また、子供の戸籍や氏が変わっても実父との親子関係は継続するので、実父の財産も相続することができます。

5.おわりに

以上のように、子供の戸籍と氏についての手続きは多岐に及ぶため、状況に応じた対応が必要になります。裁判所での手続きなど不安に感じる方は一度弁護士に相談することをお勧めします。