離婚・親子問題

離婚と子供の問題―養育費について―

2019.06.14

離婚をすることになった夫婦の間に未成年の子供がいる場合、子供に関する問題を解決しなければなりません。
親権者の決定、養育費の金額や支払い方法、子供の戸籍と姓、面会交流については離婚前によく考えて決めておくことが大切です。今回は子供の養育費について詳しく説明します。

1.養育費について

養育費とは、子供が生活するために必要な費用のことです。衣食住の費用のほかにも教育費、医療費に加え、娯楽費用(お小遣いなどの適度な金額)も含まれます。父母の収入によりますが、一般的には子供を引き取り育てている親に、引き取らなかった親が養育費を支払うケースが多くなります。

例え離婚して親権を有しない親であっても、未成年の子供を扶養する義務があり、子供には扶養を受ける権利があるためです。ですので、養育費は子供から親に請求することもできます。

養育費を支払うべき対象となる子供の年齢については、父母の話し合いで決める事ができます。家庭裁判所の調停や審判の場合は、「子供が成人するまで」とすることが一般的ですが、「高校を卒業するまで」「大学を卒業するまで」とすることももちろん可能です。

2.養育費の金額について

養育費の金額は法律で定められているものではありません。父母の収入や財産、生活レベルなどに応じて話し合いで決められます。離婚後も、親には子供に親と同レベルの生活をさせる義務があると考えられているため、生活に最低限必要な金額を支払えばいいという訳ではありません。

なお、裁判所を利用し養育費を取り決める場合には、「養育費算定表」が参考資料として広く活用されています。養育費算定表とは、夫婦の収入、子供の年齢、人数などから養育費の目安となる金額を示すものです。協議離婚、調停離婚など当事者の話し合いで養育費を決める場合、最終的な養育費は算定表の額を参考にその他の状況を考慮に入れて定められます。

以上のような方法で養育費は決められますが、養育費の支払いは長期にわたるため、将来的に様々な事情により取り決めた養育費の支払いが難しくなるケースがあります。その様な場合は、当初の取り決めた養育費の金額を変更することも可能です。

養育費の変更については、双方の話し合いによって決めることも可能ですし、話し合いがつかない場合は、家庭裁判所に養育費の変更を目的とした「養育費請求」の調停を申し立てることになります。ただし、当初取り決めた養育費の金額を変更するためには正当な理由が必要です。

《養育費を増額する場合の正当な理由の例》
■子供の進学や授業料の値上げによって教育費が増加した
■子供の病気やケガで多額の医療費がかかる
■監護者の病気やケガで収入が低下した
■リストラや会社の倒産などで、監護者の収入が低下した 等

《養育費を減額する場合の正当な理由の例》
■リストラや会社の倒産などで、支払う側の収入が低下した
■監護者が再婚や就職などで、経済的に安定した 等

3.養育費について決めたなら…

養育費の支払いは長期間に及ぶため,養育費の支払い義務を負う親の経済状況や生活環境の変化で、養育費が途中から支払われないというトラブルも多くあります。そのため、離婚時に養育費の内容が取り決められた場合、口約束だけでなく文書化することをお勧めします。後に養育費について「約束した」「していない」の水掛け論になることを避けるためです。

文書には、①支払いの期間(例:子供が満○歳になる月まで)②金額(例:子供一人につき●円)③支払い方法(例:毎月●日までに●●の口座に振り込む)を必ず明記しましょう。また文書については公正証書で作成することが望ましいです。当事者間で作成した念書、合意書等の文書では、記載内容に不備があり後々文書の有効性を争われることもあります。

また、養育費の未払いが発生して、相手の給与等の財産を差し押さえるにしても、公正証書が無ければ、例えば、訴訟を提起したり、養育費調停を申し立てる等して、債務名義を取得してからでなければ強制執行の手続きに移行できません(公正証書以外の債務名義の取得については、4.で具体的に説明致します)。

その点、公正証書は公証役場で公証人の助言を受けながら作成できるため、法的に不備の無い内容での作成が可能となります。また、公正証書には強制執行認諾文言が付いていることが一般的であり、強制執行認諾文言がある場合、養育費の未払いがあった場合に訴訟の提起等を挟まずに、強制執行の手続きが可能となります。

4.養育費の支払いが滞ったときの対応

養育費の未払いが発生した場合には、手紙や電話などで支払いの催促を行います。それでも支払われない場合は、養育費をどの様な方法で定めたかによってその後の方針が変わってきます。

協議離婚で離婚協議書は作ったものの、協議書を公正証書にしていない場合は、強制執行をすることができません。なので、まず、相手方の所在地を管轄する家庭裁判所に「養育費請求」の調停の申立てをします。調停でも解決しない場合は審判に移行します。調停や審判で解決すると、「調停調書」「審判書」が作成されます。その後も支払いがない場合には、この「調停調書」「審判書」を債務名義として、「強制執行」ができるようになります。

ここで、強制執行は相手方(債務者)の預貯金や不動産、給与、退職金、賞与といった財産の差押を行い、支払いを受ける権利のある人(債権者)がそこから取り立てることができる制度です。給与の差押えの範囲は、一般の債務では給与の4分の1までですが、子供の養育費や婚姻費用などについては給与の2分の1まで差押えることが可能となります。

強制執行は調停離婚、審判離婚、判決(裁判)離婚、和解離婚のほか、協議離婚の場合でも養育費の支払いについて執行文認諾文言付公正証書を作成していれば申し立てができます。ただし、差し押さえるべき相手方の財産を把握できていなければ強制執行をすることはできません。強制執行を申し立てる場合には、差し押さえるべき財産を調査する必要があります。

また、調停離婚、審判離婚、判決(裁判)離婚、和解離婚で養育費の支払いについて取り決めがある場合は、家庭裁判所の「履行勧告」「履行命令」制度を利用しましょう。履行勧告を裁判所に申し立てると、裁判所が支払い状況を調査し、相手方に支払うように説得、勧告します。申出に費用はかかりません。

ただし、法的な強制力はありません。相手方が勧告を受けても支払わない場合は、裁判所が期限を決めて支払いを命じることができます。これが「履行命令」です。法的な拘束力はありませんが、相手方が支払わない場合は10万円以下の過料が課せられます。

5.おわりに

養育費の支払い期間は長いものだと20年以上になるものもあります。この20年の間に養育費を支払ってもらう権利がある側も、養育費を支払う義務がある側も様々な変化が生じると思われます。養育費について取り決めたときには予想していなかった状況の変化が生じることもあるでしょう。

その時は、冷静になって適切な対処をとることが大切です。養育費の算定、未払養育費の請求について当事者で全ての決定をすることも可能ですが、子供にとって最も良い選択をするために一度専門家に相談することをお勧めします。