離婚・親子問題

裁判離婚での離婚事由について

2019.05.27

協議離婚や調停離婚では、「考え方が合わない」「一緒に生活するのが嫌になった」など、どんな理由であっても夫婦が離婚に合意さえすれば、離婚できます。しかし、離婚裁判では民法に定められた5つの離婚事由のいずれかに該当しなければ離婚は認められません。今回はこの5つの離婚事由について説明したいと思います。

1.はじめに

離婚調停が不成立になり、裁判離婚へ進む場合、離婚が認められるためには、民法で定められている5つの離婚事由のいずれかに該当していることが必要となります。5つの離婚事由とは次の通りです。

① 配偶者に不貞な行為があったとき(民法第770条1項1号)
② 配偶者から悪意で遺棄されたとき(同条同項2号)
③ 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき(同条同項3号)
④ 配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき(同条同項4号)
⑤ その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき(同条同項5号)

以上5つが民法で定められた離婚事由となります。
それでは、具体的にどの様な状態であれば、これらの離婚事由に該当すると認められるのかという部分について個別に説明します。前提として、それぞれ抽象的な概念であり、離婚事由に該当するかどうかの評価はケースバイケースになります。

今まで多数の裁判が行われ、その事例の集積によって、ある程度の物差しが作られて来ました。最終的には、個別の事例においての裁判所の判断となりますので、過去の裁判例を踏まえた判断が必要となり、専門家に相談しないと分からないことも多々あるでしょう。

2.各離婚事由の詳細

①配偶者に不貞な行為があったとき

日本では重婚が禁止(民法第732条)されており一夫一婦制であることから、婚姻関係にある夫婦には配偶者以外の異性と性行為に及んではならないという貞操義務があります。
不貞行為というのは、配偶者以外の人と肉体関係を持った場合に該当するため、夫婦間の貞操義務に反することになります。もし、配偶者が異性とデートをしていたとしても、配偶者と異性の間で肉体関係があることを証明できなければ不貞行為には該当しません。また不特定の相手との売春行為なども不貞行為に該当する可能性があります。

②配偶者から悪意で遺棄されたとき

民法第752条では夫婦は同居し、お互いに協力し、助け合わなければならないと定義されております。離婚事由にある「悪意で遺棄する」という意味は、同居、協力、扶助という民法で定められている夫婦の義務を故意に行わないことを指します。

代表的な例として、「夫婦の一方が配偶者の了解なく家を出ていき別居状態にある」「生活費を渡してくれない」「扶養義務のある家族の面倒を見ない」等があります。なお、単身赴任による別居、離婚の話し合いの最中での別居は同居の義務違反には該当しません。

③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき

配偶者からの音信が途絶え3年以上が経過し生死が不明な場合は、配偶者は離婚事由があるものとして離婚訴訟を起こすことができます。
また、生死不明の状態となり7年以上が経過している場合は、家庭裁判所に失踪宣告を申立てることが可能となり、失踪宣告が確定すると、法律上、不在者は死亡した扱いとなるため婚姻関係は解消されます。

なお、配偶者の生死が3年以上明らかでないことを原因とする離婚裁判により離婚が確定した場合、後日、行方不明者の生存が確認されても離婚は取り消されませんが、失踪宣告に基づき離婚した場合は、本人または利害関係人の請求によって失踪宣告が取り消されるケースもあり、この場合は婚姻関係も復活することになります。そのため、失踪宣告を用いることは、それなりに確実に死亡が予想される場合に限定すべきでしょう。

④配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき

配偶者が精神病になったというだけでは離婚は認められません。配偶者の精神疾患が極度のもので、将来的に回復が見込めないという医師の意見や診断が必要であり、医師の診断に基づいて裁判所が厳格に判断します。

また、裁判では医師の診断以外にもこれまでの介護や看護にどれだけ尽力したかも一つの判断材料となります。
なお、配偶者が精神病によって判断能力がなく、訴訟を行えるだけの能力が無い場合には、配偶者の成年後見人を選任し、成年後見人が訴訟の対応をすることになります。

⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき

①から④の離婚事由に該当しない場合も、その他の個々の事情を考慮し婚姻関係の継続が難しいと裁判で判断されるケースがあります。一般的な離婚案件のほとんどは、この離婚事由に基づいて請求されるものです。代表的なものを以下に記載致します。

【性格の不一致】
単に「気が合わない」というだけでは認められません。性格が合わないために愛情を失い、夫婦関係が破綻しており修復不可能な状況でなければなりません。

【配偶者からの暴力】
身体的な暴力だけではなく、言葉による侮辱や虐待、暴力による性交渉の強要など広い範囲の行為が暴力として認められています。

【舅・姑・配偶者の親族との不仲】
単に配偶者の親族と気が合わないという問題ではなく、配偶者の親族から暴力、侮辱を受け、それらの状況に対し配偶者も改善する努力をせず、または、親族に加担するなどの行為により、婚姻関係が破綻していることが必要です。

【宗教活動にのめり込む】
信仰や宗教活動は個人の自由ですが、宗教にのめり込んで働かない、家事、育児を行わない、生活費のほとんどを寄附する等の行為で夫婦関係が破綻した場合も離婚は認められます。

3.おわりに

以上、5つの離婚事由について説明しましたが、裁判では離婚事由が存在することを証明しなければなりません。これらを証明するには専門的な知識、経験が必要となります。離婚事由のいずれかに該当するかもしれないと思った方は一度弁護士などの専門家へ相談することをお勧めします。