離婚・親子問題

養育費~どうやって金額を決める?~

2019.05.23

子供がいる夫婦が離婚する場合、親権と同様に問題となりやすいのが養育費です。親権を持たない親に養育費を支払う義務があることは分かっていても、実際どのくらいの金額を払えば良いのか分からない方は多いのではないでしょうか。今回は、養育費の決め方や、一度決めた額を変更することができるかについてご説明します。

1 養育費とは

離婚すると元夫婦は別々に生活し、一方が子供を引き取り、もう一方は子供と別れて暮らします。しかし法律上、親は、子供と同居しているか否かにかかわらず、子供に対して扶養義務(自己と同程度の生活を保持させる義務)を負っています。
したがって、本来であれば両親ともに子供の生活費を負担しなければならないわけですが、現実的には、子供と同居していない親は、子供と同居している親に養育費を支払うという方法で、その義務を履行することになります。

養育費の支払い期間は、子供が成人に達するまでと考えるのが通常ですが、近時は4年制大学に進学する子供が増えていることから、4年制大学卒業の月(22歳)まで養育費を支払うことが珍しくなくなっています。その場合の養育費の取り決めの条項は、以下のようなものとなります。

相手方は、申立人に対し、長男Aの養育費として、〇年〇月からAが20歳に達する日の属する月まで(ただし、Aが大学に進学した場合には、大学を卒業する月まで)、毎月金〇円の支払義務があることを認め、これを毎月末日限り申立人名義の〇銀行〇支店普通預金口座(口座番号〇)に振り込む方法により支払う。振込手数料は相手方の負担とする。

2 養育費の決め方

養育費の金額などは、父母の話合いで自由に決めることができます(民法766条1項)。経済力によっては、月に数十万円の養育費を支払うことができる人もいれば、月に数万円の養育費を支払うことが難しい場合もあるでしょう。

養育費の具体的な金額については、平成15年に東京・大阪養育費等研究会から、親の収入や子の年齢等に応じて金額の目安を定めた簡易算定表が公にされています。しかし、この算定表に従うと養育費の額が低すぎるなどの問題があり、平成28年に日本弁護士連合会から「新算定方式」が提言されました。

現在、実務では簡易算定方式が主流ですが、弁護士が依頼者の状況に応じて新算定方式によった養育費の金額を主張することも少なくありません。また、最高裁司法研修所が養育費算定方法の見直しを検討して研究を行っており、今年5月中に報告書がまとめられる予定です。この発表によって今後実務でも養育費の算定方法が変わる可能性があり、注目されています。

養育費の金額等について父母の協議が調わない場合には、家庭裁判所が当事者からの申立てを受けて、最終的には審判で定めることになります(民法766条2項、家事事件手続法別表第2・3項)。実務では、まず調停の申立てが行われるのが通常です。

3 養育費の変更

離婚にあたり夫婦間で協議して養育費を決めても、あるいは調停や審判で養育費が決められても、その後に事情変更が生じたときには、養育費の金額を増減することが可能です(民法880条)。

これは、あくまでも養育費を決めた後に事情の変更が生じた場合に限られ、養育費を決めた際に既に生じていた事情を理由に、養育費の金額の増減を求めることはできません。
裁判例でも、養育費を決める調停成立時に既に再婚し、なおかつ再婚相手の子供と養子縁組をしていた事案で、再婚と養子縁組により社会保険料が増加したこと等の理由で収入が減少することは、その当時、予測可能な事情であるから、養育費を減額すべき事情の変更とはいえないとしたものがあります(東京高決平成19年11月9日)。

これに対し、養育費を決めた後に再婚して生活環境が変わることは、事情変更に該当します。審判例でも、離婚後3年間は毎月20万円、以後三女が23歳になるまで毎月30万円の養育費を支払う合意をしたが、その後父も母も再婚し、3人の子供は母の再婚相手と養子縁組した事案で、合意当時予想し、あるいは前提となし得なかった事情があるとして、合意事項を修正し、生活保護基準方式を用いて、養育費の月額を21万円(1人あたり7万円)に減額し、養育費の支払の終期を成年到達時までとし、臨時の出費は養父が負担するとしたものがあります(東京家審平成2年3月6日)

4 養育費の一括払い

養育費の支払方法は、毎月払いが原則です。なぜなら、養育費は日常の生活費に充てられるものだからです。したがって、家庭裁判所の調停や審判では、養育費の一括前払いは原則として認められません。

これに対し父母の話合いでは、養育費を一括前払いと決めることも自由です。しかしその場合、養育費が早々に費消されてしまい、将来子供の監護養育に支障を来すおそれがあります。前払いを受けた養育費を計画的に使うよう、細心の注意を払わなければなりません。

裁判例でも、調停離婚にあたって、子供が成年に達するまでの養育費として父親が一括で1,000万円を支払ったが、母親は子供を小学校から私立学校や学習塾にも通わせたために、子供が中学校を卒業するまでにその1,000万円を使い切ってしまったことから、高校と大学の費用を父親に請求したところ、認めなかったものがあります(東京高決平成10年4月6日)。

では、養育費を一括でもらった者が再婚したら、どうなるのでしょうか。たとえば養育費の月額を10万円と決めて、子供が22歳になるまでの10年分の合計1,200万円を一括で支払った前夫は、前妻が再婚した場合に、その一部の返還を請求することができるのでしょうか。
前述のように、離婚に際して養育費の金額を決めた後に事情変更が生じたときには、養育費の金額を増減することが可能であり、再婚して生活環境が変わることも、ここでいう事情変更に該当します。

したがって、前妻の再婚相手である後夫が高収入であって、本来ならば適正な養育費が月額3万円になるとするならば、月額10万円からこれを差し引いた7万円は払い過ぎたことになります。それゆえ、前夫としては、理論上は再婚後子供が22歳になるまでの過払分の返還を求めることが可能となりそうです。

しかし、養育費を一括で支払う者の意思としては、将来起こり得るさまざまな出来事を考慮した上で、ある程度の事情変更は不問に付すというリスクを受容しているのではないでしょうか。
したがって、前妻が高収入の後夫と再婚しても、このことは想定内の出来事であって、養育費の一部返還の理由にはならないと考えるべきでしょう。逆に言うと、そのようなリスクを受け入れたくないのであれば、養育費を一括で支払うべきではありません。

また、もらう側としても、養育費を一括でもらった場合、国税局は毎月もらえば良いはずの養育費を一括でもらう以上、それは贈与であると認定して、贈与税の対象としています。ですので、一括で支払うことは払う側にもリスクがあると共に、もらう側にも負担がありますので、やはり子供の成長や状況に応じて毎月支払い続けることがベストでしょう。

5 まとめ

現在、実務では養育費の金額は簡易算定方式によって決められることが主流ですが、それでは金額が低いため、子供の生活を重視すると、算定表で導き出された金額を適宜修正して妥当な金額を導くことが必要でしょう。

また、ご説明したように養育費の一括払いはお勧めできませんが、有責配偶者から離婚を求めている場合などは、相手方から「養育費を一括で支払わなければ離婚しない」と主張されたら、受け入れるしかない状況も考えられます。養育費の金額がなかなか決まらない場合や金額を変更したい場合には、専門家に相談しましょう。