離婚・親子問題

養育費を決めるために知っておくべきこと

2019.05.13

子供がいる夫婦が離婚する際、親権だけではなく養育費の取り決めは必ず付きまとう事柄でしょう。では、そもそも養育費とはなんでしょうか?

1 そもそも養育費とは?

当然のこととして民法でも定められていますが、子供を扶養する義務は両親にありますので、未成年の子と離れて暮らしている親(以下「義務者」といいます。)も、子供の生活費や教育費などを負担しましょうというものが養育費制度となります。この養育費の請求とは、子供が親に対して行う扶養請求ですので、本来は法的には子供に請求権が認められる権利になります。

しかし、子供に支払っても子供自身が養育費を適切に使えませんので、実際に請求する際は、監護親(子供と一緒に暮らしている者)が請求することが多いです。そして、一般的に親権者が子供と一緒に暮らしている監護親であるケースがほとんどですので、離婚した夫婦は親権者が非親権者に対して、養育費を請求することとなります。

様々な離婚を見ていると、夫婦間では離婚を成立させることが先決となっており、養育費の取り決めを明確にすることなく、離婚される方が多くいらっしゃいます。(口約束で決めている夫婦も見受けられますし、おおよその金額だけ決めている夫婦も見受けられます。)

また、明確に支払日や支払金額を決めている夫婦であっても、それを明記したものが単なる離婚協議書の場合が多く、養育費の支払いが滞った場合、強制的に養育費を支払わせるというのが困難なケースが散見されます。

養育費は、子供に安心した日常生活を与え、十分な教育費を与えるためのお金ですので、子供の成長にとって非常に重要なお金であり、不払いが許されてはならないものです。必ず、不払いが発生したときに対応できるよう、養育費の決め方などをきちんと理解しておきましょう。

2 公正証書で離婚協議書を作成することの重要性

義務者(養育費を支払う側の親)は、自身の生活と同程度の生活レベルを子供にも保持させる義務があります。そのため、養育費の金額については、義務者及び監護親それぞれの収入によって決めることになります。

まず、養育費を決める段階としては、①協議・②調停・③審判の3段階があります。協議の場合は、当事者間での話し合いとなりますので、口約束や離婚協議書で決めることが多くなっています。

しかしながら、もし養育費の支払いが滞り最終的には支払ってもらえなくなった場合、強制的に支払わせる効力がありませんので、相手方が応じてくれなくなったらどうすることも出来ません。そこで、協議の段階で強制力を持たせる方法として、公正証書で離婚協議書を作成する方法があります。

公正証書とは、法務大臣に任命された公証人(元裁判官や検察官などの法の専門家)が作成する公文書になります。この公正証書は証明力及び執行力を有していますので、仮に養育費の支払いが滞った場合は、給与等の差押えをすることが出来ます。
裁判所を使わずに、当事者同士の話し合いで養育費を決めて離婚する際は、口約束や協議書だけではなく、必ず公正証書も作成するようにしましょう。

3 話し合いで決まらない場合

次に、協議で決まらなかった場合や協議書等のみで養育費の支払いがなされなくなった場合には、家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てます。調停とは、裁判官のほかに調停委員という第三者が間に入り、裁判所で話し合いを行う制度です。

それぞれの感情だけで意見を言い合うのではなく、客観的な視点で物事を判断することが出来ますが、第三者を交えた話し合いですので、まとまらなければ調停不成立となります。(もちろん裁判所が関与する以上、法律論として養育費の決定を促していきますが、あくまでも裁判所を間に挟んだ話し合いでしかないため、どれだけ法的に合理的な結論であっても、互いの合意が得られなければ調整は成立しません。)

そして、調停が成立しなければ、審判という制度に移行します。こちらは、提出された資料及び双方の事情に基づいて、裁判官が養育費の額を決定します。(一般的に「裁判」とイメージされているものです。)では、どのように養育費額が決まるのでしょうか?

家庭裁判所では、過去の養育費に関する審判例などを踏まえながら、養育費の算定表というものを発表しており、夫婦互いの収入状況と子供の人数や年齢によって養育費額を算出するための表を作成しています。

審判で養育費額を決める場合、裁判官は基本的にこの養育費算定表に基づいて養育費額を決めますので、これが養育費の相場のようなものになります。しかし、世の中の監護親が感じている通り、この算定表で算出される養育費額は、子供に十分な生活レベルを維持させながら十分な教育を与えるには不十分な金額と感じる人も多いかと思います。

そのため、審判までいくと、もしかしたら希望の金額より低い金額になってしまう可能性もあるため、出来るだけ調停まででまとめたほうがいいでしょう。

なお、調停及び審判となると、裁判所から調停調書又は審判書というものが発行されますので、支払が滞った場合でも、履行勧告や給与等の差押え等を行うことが可能となります。

4 養育費の算定表

では、養育費額はどのように決めたらいいのでしょうか?

養育費額には特段法的定めはなく、前述の通り、自身と同等の生活レベルを維持できるだけの額を支援することが望ましいとされています。監護親側としては、子供には生活費や教育費など、思いのほかお金がかかるため、できるだけ多くの養育費をもらいたいところだと思います。

しかしながら、義務者の収入に見合わないような金額を取り決めてしまうと、義務者自身の生活が圧迫され、養育費の支払いがストップしてしまう恐れがあります。そのため、きちんと義務者の収入に考慮した無理のない金額にしましょう。

ただ、そうは言っても、「じゃあ収入に応じた無理のない金額って一般的にいくらなの?」という疑問が浮かぶと思います。そこで、家庭裁判所が作成した養育費の算定表というものが裁判所のHPに掲載されています。
http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/

これは、実際に裁判所も養育費を決める際に参考にしている表で、双方の収入から養育費の相場を算定できるものとなっています。しかしながら、子供にはそれなりに費用がかかってきますので、この算定表はあくまでも参考程度にして頂き、双方の収入及び子供の将来設計に応じた金額の設定をするようにしましょう。

5 養育費の変更

何度も話に出ている通り、子供がひとり立ちするまでの間には何かとお金がかかります。毎月の生活費だけでなく、習い事の費用、進学時の諸費用など、大きくなるにつれて、節目節目で高額な費用が必要になってきたり、私立学校に進学し学費の負担が増加したりすることも考えられます。

また義務者や監護親の収入に増減が生じる、新たなパートナーと籍を入れるなど、両親の状況の変化もないとはいえません。

そのため、そういった状況の変化に合わせて養育費の減額や増額を請求することが可能となっています。ただし、一度取り決めた養育費を変更するためには、それ相応の事情変更があることが必要とされています。(義務者と再度話し合い、新しい金額で合意がとれればそれで問題ありません。)

養育費変更の調停を行った場合は、調停委員から増額減額を求める理由について、具体的な事情を聴取され、それを裏付ける資料の提出を求められます。また、現在の養育費を決めた際に、将来の子供の進学状況に変更が生じる可能性を考慮して金額を取り決めたか否かも影響してきます。

このように事情変更があるかどうかについては、慎重な検討が必要とされており、調停委員が事情変更があると認める方向性になった際は、具体的な金額の調整に進むことになります。変更があると認められない場合には、審判に移行しても認められない可能性が高いため、当事者同士で折り合うことの出来る金額を模索するほかありません。

6 まとめ

養育費は、子供のためのお金です。子供が十分な生活をしながら、適切な教育を受け、一人前の大人になっていくために必要なお金です。離婚当時は当事者の感情だけで物事を進めてしまいがちですが、子供の将来のこともきちんと考え、養育費もきっちり取り決めをしておきましょう。