離婚・親子問題

財産分与に税金ってかかるの?

2017.08.03
離婚・親子問題|弁護士ニュース

離婚の際に問題になってくるのが財産分与です。財産分与を考えるときに,あまり気にしていないことかも知れませんが,財産分与にも税金がかかってくることがあります。そこで,今回は,財産分与のときに問題になってくる税金について簡単にご説明させて頂きます。

1 財産を受け取る側

まずは,財産を受け取る側にかかる税金について,贈与税,不動産取得税を中心にご説明させて頂きます。

(1)贈与税について

 贈与税は,贈与により無償で財産を取得した場合に,財産を取得した人に課税されます。
しかし,財産分与は,夫婦の財産関係の清算や離婚後の生活保障のための財産分与請求権に基づき給付を受けるものと考えられるため,財産分与が行われた場合,原則として贈与税は発生しません。
もっとも,①その額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他全ての事情を考慮してもなお多すぎる場合,その多すぎる部分に対して,贈与税が課税されます。例えば,本来財産分与すべき金銭が1億円,その分与の割合が夫:妻で5:5にも関わらず,夫が2,000万円,妻が8,000万円の財産分与を行った場合,妻が受け取った8,000万円の財産のうち3,000万円は「多すぎ」ますので,この部分について贈与税が課税されることになります。
 また,②離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合,離婚によって受けた財産全てに対して,財産をもらった側に贈与税が課税されますので,注意が必要です。

(2)不動産取得税について-不動産の場合

しかし,何も財産分与は金銭だけにされるものではありません。そこで,次に,不動産取得税についてご説明させて頂きたいと思います。
先程も申しましたように,財産分与は,夫婦の財産関係の清算や離婚後の生活保障のための財産分与請求権に基づき給付を受けるものと考えられるため,原則として不動産取得税も課税されません。
なお,不動産取得税ではありませんが,不動産の分与を受けた場合,別途,固定資産税や所有権移転登記の際の登録免許税がかかりますので注意が必要です。ちなみに,通常,固定資産税は「固定資産評価額×1.4%(標準税率)」,登録免許税は「固定資産評価額」を基準に適切な税率を乗じたものについて課税されることになります。

2 財産を渡す側

 財産分与に際し,金銭で分与した場合,財産を渡す側は課税されませんが,土地や家屋などの不動産,株式のような金銭以外の財産を分与した場合,譲渡所得税が課税される可能性があります。そこで,どのような場合に譲渡所得税が課税されるのか見て行きたいと思います。

(1) どのような場合に譲渡所得税が課税されるの?

 財産を渡した側は,金銭以外の財産を譲渡したことにより,所得税法33条1項にいう「資産の譲渡」をしたことに該当するため,譲渡所得税が発生することになります。
課税対象となる譲渡所得の金額は,土地や建物を売った金額から不動産の購入代金などの取得費,仲介手数料など土地を売るための費用である譲渡費用(以下,この二つをまとめて取得価額と言います。)を差し引いて算出することになりますが,財産分与としての資産の譲渡があった場合,分与財産が時価で譲渡されたものとして算出されることになります。したがって,時価と取得価額の間に値上がりの利益があるときには,その利益について譲渡所得税が課税されることになるのです。つまり,資産が取得時より値下がりした場合には課税されず,値上がりした場合には課税されることになります。

ただし,夫婦の一方の単独名義で取得した財産を他方に分与する場合,同財産が実質的に見て夫婦の共有財産であるとき,他方の共有持分の部分のみを財産分与によって譲り受けることになりますので,注意が必要です。例えば,夫名義の不動産であっても,夫婦が共働きであり,2分の1の割合で共有持分を持っているとしたら,課税対象になる譲渡所得は、同不動産の時価の2分の1を基礎に算出されることになります。
 もっとも,譲渡所得税の計算は,長期譲渡所得か短期譲渡所得によって計算方法が異なりますので,それぞれの計算方法をご紹介致します。

(2) 譲渡取得税の計算はどうやってするの?

 譲渡をした年の1月1日において,所有期間が5年以上の場合の所得を「長期譲渡所得」,5年未満の場合の所得を「短期譲渡所得」と言います。
 そして,所有期間が5年を超える長期譲渡所得の場合,所得税15%(復興税加算後15.315%),住民税5%,短期譲渡所得の場合,所得税30%(復興税加算後30.63%),住民税9%になります。譲渡所得の計算は,短期長期とも共通で,譲渡収入の金額から取得価額(取得費+譲渡費用)を差し引いた金額を基礎にして行います。
 これをまとめると,

 分与財産の時価(自己の持分を超える部分) - 取得価額(取得費 + 譲渡費用) × 税率 = 税額

 となります。
例えば,共働きの夫婦において,不動産を婚姻中の平成10年5月1日に2,000万円で取得し,夫名義としていました。平成16年4月1日,その不動産を離婚に際し,財産分与しました。この時の不動産の時価は5,000万円でした。
この場合,譲渡をした平成16年1月1日の時点で既に5年を経過していますので,長期譲渡所得ということになります。そして,夫婦の持分の割合はともに2分の1ですので,財産分与を受けた不動産の価額のうち自分の持分を超える部分は2,500万円分となります。取得価額が2,000万円ですので,これを差し引いた残りの500万円について,長期所得の税率(所得税15%(復興税加算後15.315%),住民税5%)を掛けることになるのです。
 よって,取得税として76万5750円、住民税として25万円が課税されることになります。

(3) 節税方法はないの?

もっとも,財産を渡す側にかかる譲渡所得税も,①居住用財産の譲渡所得の特別控除が適用される場合,②居住用財産の長期譲渡所得の軽減税率の特例が適用される場合,③配偶者控除が適用される場合などには支払うべき税金を少なく抑えることが可能です。

ア ①特別控除(租税特別措置法35条)
財産分与として居住用財産を譲渡した場合,3,000万円の特別控除を受けることが出来ますので,財産分与の対象財産が居住用財産の場合,分与財産の時価 - 取得価額(取得費 + 譲渡費用)から,さらに3,000万円の特別控除を差し引くことが出来ることになります。すなわち,居住用財産であれば,3,000万円以上値上がりしていなければ税金はかからないことになります。
もっとも,この特例は,夫婦間の譲渡の場合には認められませんので,特例の適用を受けるためには,離婚をした後で財産分与を行う必要があります。

イ ②長期譲渡所得税についての軽減税率の特例(租税特別措置法31条の3)
さらに,①に加えて譲渡した年の1月1日において所有期間が10年間を超える居住用財産を分与した場合,税率が軽減されます。具体的には,通常の長期譲渡取得の場合,所得税15%,住民税5%の税率であったのが,分与財産の時価 - 取得価額(取得費 + 譲渡費用)が6,000万円以下の部分については,所得税率が10%(復興税加算後10.21%),住民税率が4%となります。6,000万円を超える部分については,通常の長期譲渡所得の税率と同じです。

ウ ③配偶者控除
20年以上婚姻関係を続けている夫婦間で居住用財産を譲り渡す場合,基礎控除110万円に加えて最高2000万円分(最高で合計2110万円)は税金がかかりません。

3 まとめ

いかがでしたでしょうか?財産分与の際には様々な税金が関連してくるので,事前に知っておくと損せずに済むと思います。
もっとも,税金分野はかなり細かな規定がされておりますので,弁護士であっても,必ずしも精通しているものではなく,一般の方がいざ問題に直面してそれを体系的に理解することはどうしても困難だと思います。また,離婚に伴う問題は税金だけではありません。
そこで,離婚に伴う財産分与を考えるにあたっては,税金だけでなく,離婚についても詳しい「税理士の資格を持った弁護士」にご相談することをお勧め致します。
以上

困ったときに頼りたい弁護士ニュース