離婚・親子問題

浮気相手に騙されていた場合って,逆に慰謝料は取れないの?

2017.07.09
離婚・親子問題|弁護士ニュース

不倫は一般にしてはいけないことであるとのコンセンサスがあると思います。このことは,不倫をしたら離婚することになったり,慰謝料を請求されたりすることが周知されていることからも明らかでしょう。
 ただ,不倫をしていた人の中には既婚者と知らずに付き合っていたケースもあります。また,既婚者とは知っていたものの,奥さんとは離婚寸前で夫婦関係は形骸化しているものと認識したからこそ交際を始めたというケースもあります。このように,不倫といっても,既婚者に騙されて不倫に至ってしまったという人も少なからずいらっしゃいます。このような人も慰謝料をとられてしまうのでしょうか?むしろ既婚者に騙されてしまった被害者として慰謝料を取れるのではないでしょうか?今回は,浮気相手である既婚男性に騙されていた女性は慰謝料を支払わなければならないのかについてお話ししたいと思います。

1 事案の紹介

 既婚男性Xとその妻Aは,平成19年に婚姻しました。同年には,子供も生まれ,X・A夫婦は夫婦として何不自由なく暮らしていました。
 しかし,Xは出会い系サイトに嵌り,その中で後に浮気相手となるYと知り合いました。Xは,Yに対して,妻Aとの生活が苦痛でならないなどと度々言っていました。Yは当初Xの話を信じてはいませんでしたが,Xは妻Yとの仲が破綻しているのは間違いないとして,弁護士を入れて離婚調停中であると言ってきました。加えて,Xは弁護士を依頼していることを信用してもらうため,弁護士からの報告書を見せてきました。そのため,YはXAの婚姻関係は破綻していると信じて男女の仲になりました。
 しかし,Xが見せてきた証拠はすべてXが偽造したもので,一見してわからない程精巧なものでした。

2 騙されていた人に対する妻からの慰謝料請求が認められない!

 では,このような事案において妻AからYへの慰謝料請求が認められるでしょうか?
 流石にこのような場合であればYへの慰謝料請求は認められません。たしかにYはXが既婚者であると知ってはいるのですが,既にXA間の婚姻関係は破綻していると過失なく信じているからです。通常であれば,裁判所は「婚姻関係が破綻していると信じました」と主張したとしても,簡単にこれを信じることはないのですが,今回のようにXが証拠まで偽造して信じ込ませていた場合であれば,Yが婚姻関係が破綻していると信じたとしても仕方がないと言えるでしょう。

3 騙されていた人は既婚者に対して慰謝料を請求できないの?

 逆に,Xに騙されていたYはXに対して慰謝料を請求できないでしょうか?
 このような場合,XとYの双方の不法性を比較した上で,Yの請求が認められるかが判断されることになります。
 さて,どういった場合であればYの請求が認められるのか,実際の裁判例をいくつか見てみたいと思います。

〈Yの請求が認められた裁判例-①〉

 Yは,就職先で上司であり妻と三人の子供を持つXと知り合いました。Xは妻と不仲であったので,Yと婚姻する意思がないにもかかわらず,妻と離婚して婚姻する旨の嘘を伝えたため,Yはその話を信じて男女の仲になり,その後,Yは妊娠しました。

 YがXに妊娠した旨話すと出産を勧めてきましたが,その翌日にはYを避けるようになりました。そして,XはYが分娩した際には,費用を負担したほかは交際を絶ち,他の女性と浮気をする有様でした。
 このような事案において,裁判所は「女性が情交関係を結んだ当時男性に妻のあることを知っていたとしても,その一事によって,女性の男性に対する貞操等の侵害を理由とする慰謝料請求が,民法708条の法の精神に反して当然に許されないものと画一的に判断すべきではない」として,XはYに対して60万円の慰謝料を支払うべきであるとしました。

〈Yの請求が認められた裁判例-②〉

 既婚男性XはYに対して,全くの虚偽の事実やエピソードを交えて,妻との夫婦関係が破綻しており,離婚必死であるとの嘘をついてYを誤信させ男女の仲になりました。その後,Yから避妊を求められた際にも,「子供もほしいし結婚も考えている」などと話しました。その後も夫婦の間で離婚の話など全く出ていないのに,全くの虚偽の事実やエピソードを交えて,「離婚してYと暮らしたい」などと述べ,交際を続けました。ついにYは妊娠してしまいましたが,Yが中絶したいと言ってもそれを再三拒否し,結局Yは出産することになりました。
 このような事案において,YにもXの言動を簡単に信じたという点で落ち度はあるとしつつも,Xは全く虚偽の事実を述べるなどその違法性の程度の方が大きいとして,XはYに対して75万円の慰謝料を支払うべきであるとしました。

 このように浮気相手Yが既婚者であると知っているだけでなく,婚姻関係が破綻していると軽信した場合であっても,Xが殊更嘘をついてYとの交際を続けているのであれば,XはYに対して慰謝料を支払わなければならない場面があると言えるでしょう。
 また,これらの裁判例を踏まえれば,最初に例として紹介したYの請求も認められる可能性が高いでしょう。

4 まとめ

 いかがでしたでしょうか?騙されて浮気してしまった場合であれば,妻からの慰謝料請求に応じる必要がないかもしれませんし,逆に騙した男性に対して慰謝料を請求することも可能かもしれません。
騙されて交際していたのに慰謝料まで請求されてしまい,辛く何も考えたくないかもしれませんが,そういったときは一人でも自分のために動いてくれる人が助けになるものです。経験豊富な弁護士であれば,あなたの気持ちも考えた適切な対応をすることが可能です。
一度,離婚事件について経験豊富な弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
以上

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