離婚・親子問題

浮気をした側からの離婚請求は認められないの?

2017.07.17
離婚・親子問題|弁護士ニュース

「別に好きな人が出来たから離婚したい」と思っても,あなたが浮気をしていたとすると,簡単に離婚できません。このように浮気をした側から離婚をしたいという話も決して少なくはありません。今回は浮気をしたとしても自分から離婚をするための方法があるのかということについてお話しさせて頂きたいと思います。

1 有責配偶者ってなあに?

まずは少し難しい話をさせてください。
先程から浮気をした側と言っておりますが,このような配偶者のことを法律的には,「有責配偶者」と言います。有責配偶者とは,自ら婚姻関係を破綻させる離婚原因を作った配偶者のことを言います。つまり,不貞行為(いわゆる浮気ですね)をした側,DVをした側のように離婚をする原因を作った人がこれにあたります。

2 有責配偶者からの離婚請求は認められるの?

たとえば,夫が妻に隠れて浮気をしたところ,浮気相手に夢中になってしまい浮気相手と結婚したいから妻と離婚したいという場合を想定してみましょう。この場合,有責配偶者である夫が妻に「浮気相手に本気になったから離婚してくれ」と言ったとしても認められるでしょうか?
こんなときに離婚を認めてしまっては,あまりに妻が踏んだり蹴ったりではないでしょうか。さすがに法もこのような我儘を許していません。
裁判所も同様で,有責配偶者からの離婚を原則として認めていません。

3 有責配偶者からの離婚請求が認められる場合とは?

では,有責配偶者からの離婚請求はいかなる場合でも認められないのでしょうか。先程も述べたように,裁判所は「原則」は有責配偶者からの離婚請求を認めてはいないのですが,「例外」も認めています。
すなわち,最高裁は,「離婚は社会的・法的秩序としての婚姻を廃絶するものであるから,離婚請求は,正義・公平の観念,社会的倫理観に反するものであってはならないことは当然で…信義誠実の原則に照らしても容認され得るもの」でなければならないとしています。そのうえで,①別居期間が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及ぶこと(別居期間),②未成熟の子がいないこと(未成熟子の不存在),③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態に置かれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められないこと(特段の事情の不存在)の三つの要件を満たす場合には有責配偶者からの離婚請求も認められると判断しました。
 それでは,それぞれの考慮要素について少し詳しく見て行きたいと思います。

(1) ①別居期間

まず,①別居期間について見てみましょう。
長期の別居は,破綻の程度が著しいことを示しています。一般に別居期間については,5~7年程度が認容の目安にされています。ただし,結局のところ,結婚してからの期間や同居の期間,同居中の関係性や家庭内別居の有無など,多種多様な事情を考慮するので,必ずしも一律な目安が提示できるわけではありません。

(2) ②未成熟子の不存在

 次に,②未成熟子がいないことについてお話ししましょう。
 未成熟子とは,未成年と同じ意味ではなく,経済的に独立して自己の生活費を獲得すべき者としていまだ社会的に期待されていない年齢にある者を言います。そのため,未成年でなく成人だとしても,子供が身体障害者であって働くことが困難な場合等は,未成熟子がいるとされます。
なお,高校2年生の子供がいるのですが,3歳の時から一貫して妻が育て,夫が生活費の送金を続けていた事案において,未成熟子がいるとしても,有責配偶者からの離婚請求を認めた裁判例もあり,未成熟子の有無は個別具体的な判断をされると考えられます。

(3) ③特段の事情の不存在

 最後に,③離婚を認容することが著しく社会正義に反するという特段の事情についてお話しします。裁判所は,③特段の事情として,主に次のような事情を考慮しています。

・有責配偶者が,相応の生活費を負担してきたか
・評価できる内容の離婚給付の申出がなされているか
・離婚を拒否している側の生活,収入状況
・離婚の拒否が,報復・増悪などにすぎないものか,被告側が関係修復のために真摯かつ具体的な努力をしているか

 その他の事情とも併せて考慮していますが,裁判所は,経済的な問題は財産分与や慰謝料で解決しようとしている傾向があります。

 さて,今までお話しした①~③の内容を踏まえて裁判所が実際にどのような判断をしているかご説明したいと思います。

〈事案の紹介〉

 同居期間8年間,別居期間22年間で両者の間に子供がいません。夫は別居約14年後に浮気相手と同棲を開始しており,浮気相手との間に子供がいます。夫は開業医をしており,妻は事業に失敗し現在は甲状腺腫瘍の治療中でした。なお,夫は妻の事業失敗による借金5000万円を肩代わりしたうえ,現在月20万円の生活費を送金しています。そして,財産分与によって妻に4000万円を与え,さらに終生月20万円の送金を申し出ています。
〈裁判所の判断〉
まず,裁判所は,①別居期間及び②未成熟子の不存在について述べています。すなわち,①夫婦の「別居期間は,…約22年に及び,同居期間(約8年)や双方の年齢(控訴人(夫)が60歳,被控訴人(妻)が58歳)と対比すれば,相当の長期間であ」り,②「両者の間には子がない」として,①②の要件を満たしていると判断しました。
そして,裁判所はこれに引き続いて③特段の事情があるかを検討しています。
 「被控訴人(妻)は現在も甲状腺腫瘤の治療を受けており,控訴人(夫)を頼りにし控訴人との婚姻の継続を望んでいるが,…(今までの訴訟経過を通じて)控訴人(夫)の離婚意思の固いことを認識していること」,「被控訴人(妻)は資産として(複数の不動産の)持分2分の1を所有し,控訴人(夫)から…生命保険の保険金受取人を被控訴人(妻)とした保険証券の交付を受けていること」,「控訴人(夫)は,被控訴人(妻)に対し…生活費を送金してきており,今後も引続き…送金する意向であること」,「控訴人(夫)は被控訴人(妻)に対する離婚給付として(病院についての妻の持分)2分の1の譲渡代金,離婚慰謝料及び過去の未払生活費の合計金として4000万円を支払い,かつ離婚後の生活費として…終生月20万円を支払う旨提示し…ていること」などをあげ,「被控訴人(妻)が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が存するとは認められない」として,夫からの離婚請求を認めました。

 かなり細かかったかと思いますが,裁判所はこのようにさまざまな事情を考慮して,有責配偶者からの離婚請求が認められるかを判断しているのです。

(4) 婚姻の破綻

 もっとも,これらの事情が仮に認められそうだとしても,そもそもの前提として妻との間で「婚姻の破綻」が認められなければなりません。仮に婚姻が「破綻」していなければ,離婚は認められないことになります。
たとえば,別居期間が20年にわたっていたとしても,月に何度か家に帰り,妻の世話を受けていた事案において,裁判所は,婚姻関係の「破綻」を認めませんでした。他方で,26年の別居期間中23年は妻宅へ月1~2回帰宅して世話を受けていたが,妻との共同生活の意思を完全に喪失していたとして,婚姻関係の「破綻」を認定したものもあります。このように事案によりますがそもそも婚姻関係が「破綻」が認められないということも十分あり得ますので十分に注意して下さい。

4 まとめ

以上で見てきましたように,有責配偶者からの離婚請求は非常に認められにくいものであるのが現状です。
しかし,前でも述べたように必ずしも離婚できないわけではありませんし,仮に現時点で前述の要件を満たしていなくても年数さえ経てば要件を満たしてしまうことになります。そのため,離婚に応じる代わりに財産分与や慰謝料として調整するなど交渉の余地があると言えます。
有責配偶者であったとしても離婚をされたい場合,有責配偶者から離婚請求をされた場合のいずれであっても一度弁護士に相談をしてみてはいかがでしょうか?
以上

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