離婚・親子問題

夫が風俗に通っていた場合に離婚できないか?

2017.07.21
離婚・親子問題|弁護士ニュース

「夫のスーツから風俗店の名刺が出てきた!風俗店に行ったのではないか?」こんなことがあれば心配になるのも当然です。本当に夫が風俗に行っているとしたら女性としては「汚い…」「離婚したい」と感じ場合もあるでしょう。今回は,夫が風俗通いをしているときに離婚できないかについてお話ししたいと思います。

1 どんなときに離婚できるの?

離婚をしようとする場合には,協議離婚(夫婦での話し合いを行う。一般的な離婚のイメージです。),調停離婚(裁判所が間に入って話し合いを行います。),裁判離婚(裁判所が離婚を認めるか判断します。)などの方法をとることになります(審判離婚という方法もありますが,実際に使われることはあまりないので省略します。)。
協議や調停といった方法で「離婚しよう」という合意ができるのであれば,どんな理由でも離婚することができます。そのため,夫さえ納得すれば風俗に通ったことを理由として離婚ができます。
しかし,協議や調停で離婚の合意ができない場合,それでも離婚したいときは,裁判によって離婚できないかを検討することになります。このように裁判で離婚しようとする場合は,離婚したい人と離婚したくない人を国家が強制的に離婚させる訳ですから,その夫婦に「離婚を命じられても仕方ない」という事情がある場合に限って,裁判で離婚を命じることができるようになっています。
では,実際に法律がどのような離婚原因を定めているか見てみましょう。

民法770条(裁判上の離婚)
1 夫婦の一方は,次に掲げる場合に限り,離婚の訴えを提起することができる。
① 不貞行為
② 悪意の遺棄
③ 3年以上の生死不明
④ 回復の見込みのない強度の精神病
⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由

今回では,①「不貞行為」にあたりそうですね。それでは,風俗店に通っていることが「不貞行為」にあたるかについて詳しく検討してみましょう(本来は,もっと依頼者から事情を伺った上で,様々な事情を考慮して検討するものです。そして,①「不貞行為」に該当しなかったとしても,⑤「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたる可能性もあると思います。)。

2 不貞行為にあたるか?
「不貞行為」という言葉は,法律家でもない限り,日常生活で聞くことはあまりないと思います。「不貞行為」を簡単にいうと日常用語で言うところの「浮気」と同じような意味と思っていただいて構いません。そのため,今回のように「浮気じゃないのか?」ということが問題となっている場合には,「不貞行為」といえるかを最初に検討することになります。

日本では,一夫一婦制の下,夫婦は相互に貞操義務(夫婦以外の他人と性的関係を持って行葉いけないという義務ですね。)を負っており,「不貞行為」を行うことは,貞操義務に違反することになり,相互の信頼関係を破壊することになってしまうので離婚原因とされています。そのため,「不貞行為」とは,貞操義務に違反すること,すなわち配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいいます。

 では,結局のところ,「不貞行為」とは何を指しているのでしょうか?
 この点について,裁判所は「不貞行為」を明確に定義しておりません。そのため,性交渉を行うと不貞行為なのか,性的類似行為でも不貞行為なのか判然とはしません。しかし,過去の裁判例において「不貞行為」と明確に認められ,離婚が成立した事案は性交渉が行われた事案に限定されております。したがって,「不貞行為」という言葉の定義がどうかという問題ではなく,裁判所は実際に性交渉を行わないと,なかなか離婚まで認めない傾向にあることは確かです。(離婚を認めるかどうかと,慰謝料を認めるかどうかは別次元の問題なので,性的類似行為だったとしても慰謝料が認められることには争いがないでしょう。)

そうなると,風俗に通っていたことで慰謝料が発生することは当然として,「不貞行為」に該当するとして離婚まで認められるかは,少し厳しいと言わざるを得ません。その風俗店で,女性と性交渉を行ったことが立証されれば別問題ですが。
これに対して,夫は,仮に風俗店で性交をしていることを認めたとしても,かなり虫のいい話ですが,①「本気じゃないから不貞行為ではない」,②「1回だけしか性交渉をしていない」といったように反論してくることがあります。

3 夫の反論は認められるのでしょうか?
では,これらの反論は認められるでしょうか?

(1) ①本気じゃないと不貞行為ではないのか?

かなり虫のいい話だと思いますが,①「本気じゃないから不貞行為ではない」との反論がされることが訴訟ではたまにあります。
これについては当然ですが,夫の言うように本気じゃないとしてもその意思に基づいて性交渉をしている以上,不貞行為になると判断されることが多いです。本気かどうかが問題なのではなく,実際に性交渉をしたかどうかが問題になっているからです。

(2) ②1度だけでも不貞行為にあたり離婚しなければならないの?

また,②「1回だけしか性交渉をしていない」といっても,もちろん認められないことの方が多いと思います。
前でも述べたように,「不貞行為」とは,配偶者以外の者と性的関係を持つことをいうとされていますので,回数に関係なく,すなわち1度だけの性交渉でも「不貞行為」といえるからです。
もっとも,裁判所が必ずしも離婚を認めるかというとそうではありません。民法770条2項は,裁判所は,770条1号(不貞行為)に該当する事実があったとしても,「一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは,離婚の請求を棄却することができる。」としており,不貞行為がある場合でも離婚請求を棄却する余地を残しています。したがって,今回の夫の反論のように,本気ではなく,一度だけしか性交渉をしていないということが事実である場合,それに加えて,その後の夫の行動(夫婦関係の修復に努めているか)や妻の対応等を総合考慮し,夫婦相互の信頼関係が致命的に破壊されたとまではいうことができないと判断された場合には,離婚請求が棄却される可能性があります。そのため,夫が風俗店で性交渉をしたことが判明したとしても,裁判での離婚が認められないと判断されることも可能性としてはあり得るところでしょう。

4 まとめ

以上のとおり,夫が風俗店に通ったという理由で離婚を請求するには,風俗に通ったことを「不貞行為」として主張したり,「婚姻を継続し難い重大な事由」として主張する形になりますが,いずれにしても,夫が「性交渉はなかった」等と反論して認めない場合には,性交渉があったことをうかがわせる証拠を収集して立証しなければなりません。しかし,不貞行為は,密室での行動であることが多く,証拠を掴むことは難しいため,場合によっては探偵を頼まなければ証拠を掴めない場合もあります。ただ,探偵費用はかなり高額ですので,探偵を依頼できない人の方が多いでしょう。その場合は,メールやLINEの履歴,携帯の画像を証拠として保存したり,密会の場所,時間帯,頻度等から性的関係をうかがわせる事情がどれだけあるか等を積み重ねて主張立証していくことになります。
結局のところ,風俗であることはあまり関係がありません。いくら風俗が適法なお店であるからといって,一般女性と性的関係を持つことと,お金を払って風俗で性的関係を持つことは,同じく性的関係を持っている以上,区別する理由はありません。
以上の通り,どのような事実をどの程度主張すれば「不貞行為」や「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるかについては,法的判断になりますので,この分野を多数取り扱っている専門弁護士にご相談されるのがよいでしょう。お悩みの際には,経験豊かな弁護士にご相談するようにしてください。
以上

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