離婚・親子問題

夫が借金を抱えて蒸発しちゃった…。行方も分からないし離婚できないか?

2017.07.23
離婚・親子問題|弁護士ニュース

「夫が消費者金融に手を出してしまって多額の借金を残したまま,蒸発してしまいました。もう5年経つのですが,離婚できないでしょうか?」法律事務所にはこのようなお悩みをお持ちの方もいらっしゃいます。こういった場合に離婚できれば,母子家庭として社会給付上のメリットを増やすことも可能ですし,精神的にも離婚して心機一転,新たなスタートをきることも可能でしょう。そこで,今回は,こういった場合に離婚ができるかについてお話ししたいと思います。

1 どうやって離婚すればいいの?

 離婚をしようとする場合においては,4つの方法があります。
まずは,協議離婚という方法を行うことになります。これは,当事者間での話し合いをいい,一般的な離婚のイメージがこれにあたります。そして,協議離婚がどうしてもできない場合には,調停離婚(裁判所を入れて当事者間で話し合いをします。)を行うことになります。これらの制度は話し合いによるものであるので,「離婚しよう」という合意ができるのであれば,どんな理由でも離婚することができます。たとえば,お互いの性格が気に食わないといった理由でも,宗教観が合わないといった理由でも離婚ができるのです。

しかし,今回のように行方不明になっている場合には,そもそも話し合いができませんから協議離婚や調停離婚はできません。
そうすると,判決離婚(裁判所に離婚できるかを決めてもらうものを言います)という手続によるしかありません(審判離婚という方法もありますが,実際に使われることはほぼないので省略します。)。

もっとも,通常であれば,裁判所に対して離婚を訴える場合は,離婚調停という裁判所での話し合いが通常は行われるのですが,当事者の一方が蒸発している場合には,そもそも配偶者が行方不明なのですから裁判所を介在させたとしても話し合いを行うことはできません。そこで,調停という手続を経ずに裁判所に訴訟を提起することになります。(通常は,「調停前置」といって,ひとまず調停を試み,それでもどうしても話し合いで離婚できないときに初めて訴訟を提起する決まりになっています。しかし,話し合いをするための相手方が見付からないのであれば,話し合いのしようがありませんので,調停は飛ばして訴訟提起することが認められます。)

そして,判決離婚においては,一方的に離婚することになるため,「離婚を命じられても仕方がない」といった事情がある場合に限って判決で離婚ができるようにしています。それでは,実際に法律がどのような離婚原因を規定しているか見て行きたいと思います。

民法770条(裁判上の離婚)
1 夫婦の一方は,次に掲げる場合に限り,離婚の訴えを提起することができる。
① 不貞行為
② 悪意の遺棄
③ 3年以上の生死不明
④ 回復の見込みのない強度の精神病
⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由

 

2 夫が借金を残して蒸発したことは離婚原因にあたるの?

では,今回のように夫が借金を残して蒸発してしまった場合は,上で見た離婚原因のどれにあたるのでしょうか。
配偶者が行方不明である場合に考えられるのは,①配偶者から悪意で遺棄されたとき,②配偶者の生死が3年以上明らかでないとき,③婚姻を継続し難い重大な事由があるとき,の3つの構成が考えられます。実際にどれを理由として主張するかについては,事案によって変わってきますが,失踪の年数などを考慮して決定することになると思います。

また,裁判所に対して訴えを提起する場合には,訴訟の相手となる人に対して訴状という書面に離婚原因を記載して送達することになります。しかし,当事者が蒸発している場合では,配偶者が行方不明であることから,裁判所の掲示板に相手方の氏名を掲示するという公示送達という手段によることになります。しかし,裁判所は,公示送達を簡単には認めません。裁判所は,相手方の知らない間に判決がでる公示送達という手続を極力避けようとしますので,公示送達を認めてもらうためには,相当念入りな調査が必要になります。この調査は当事者で行うことが極めて困難でしょうから,弁護士事務所を経由して調査会社などに依頼するのが適切でしょう。

3 まとめ

 今回のように,配偶者が失踪してしまった場合には,経済的な支柱がなくなってしまっているのですから,実態に合わせた社会的な保護を受けたい,早く気持ちを切り替えたい,と考えるものだと思います。
ただ,蒸発を理由として離婚する場合には,①調停で裁判所に慣れる前にいきなり訴訟が始まってしまうこと,②公示送達が認められるには,様々なハードルがあり専門家でないと判断が難しい場面が多いこと,③蒸発からの年数によって失踪宣告を用いることもできるなど法的知識が必要になることから,弁護士に依頼することが望ましいといえます。
以上

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