離婚・親子問題

いきなり婚約破棄された場合、慰謝料ってどれくらいとれるの?

2017.07.25
離婚・親子問題|弁護士ニュース

長年付き合った交際相手からプロポーズされ,婚姻に向けて着々と準備を進めていたのに,その交際相手の浮気が発覚して,浮気相手と結婚するからと婚約を破棄されてしまった…。このように不貞行為をした相手から婚約を破棄された場合に慰謝料はどれくらいとれるのでしょうか?今回は,不貞行為をした相手による婚約破棄の場合を想定して、慰謝料の相場などについてお話しいたします。

1 どんなときに慰謝料をもらえることになるの?

婚約破棄によって慰謝料を請求するためには、婚約が成立していることと婚約の解消に正当な理由がないことが必要になります。

(1) 婚約が成立していること

婚約とは,将来婚姻をしようという当事者間の約束を言い,プロポーズの存在だけではなく,婚約指輪の授受・結婚式場の下見・両親への挨拶・結納式の実施といった多種多様な事情を総合考慮することになります。そのため,交際中に「一緒に暮らそう」、「ずっと一緒に居たい」といった発言があるだけでは婚約があるとは認められないことが多いでしょう。
 婚約の成否は,実際の事件において争われることも多いのですが,今回のお話の前提として婚約は成立しているものとしてお話をさせて頂きたいと思います。

(2) 婚約の解消に正当な理由のないこと

婚約を解消した場合,正当な理由のない限り,婚約を履行しなかったとして損害賠償責任を負うことになります。
 今回は,不貞行為をした相手が婚約破棄をしたというケースを想定していますので,婚約を解消する正当理由は認められないという前提でお話をさせていただきます。(なお,正当理由の有無の判断は,婚約解消に至る諸般の事情の総合判断になりますので,専門家にご相談ください。)

2 賠償すべき慰謝料

 では,ここから本題である慰謝料の話に入っていきたいと思います。

(1) 慰謝料の相場と考慮事情

さて、それでは婚約が不当に破棄されたとしていくらくらいの慰謝料をもらうことができるのでしょうか?
 一般に,婚約破棄によって支払われる慰謝料の相場は50万円~200万円程度とされていますが,事案によっては300万円程度の高額な慰謝料が認容されることもあります。
 裁判所はどういった事情を考慮して慰謝料の額を決定しているのでしょうか?
裁判所は慰謝料の額を判断するにあたって

・婚約破棄に至るまでの期間や原因
・性交渉の有無、程度
・お互いの年齢差
・被害者の年齢
・同居の有無、期間
・社会的地位や資産
・婚姻の準備の程度
・妊娠・出産の有無
・婚約に伴う退職の有無

 といった事情を考慮して判断することになります。

(2) 事例の紹介

以上のような事情を踏まえて、裁判所がどのような判断しているか参考になる裁判例を紹介したいと思います。

〈事案①〉

請求者 女性→男性
請求額→認容額 請求額300万円→認容額100万円
判断の理由 女性が婚約期間中に妊娠・流産したこと,男性の婚約不履行の動機が別の女性との交際にあったと伺われることが増額に影響している一方で,知り合ってから婚約破棄に至るまでの期間が5か月余りにすぎないこと,女性が婚姻の準備のために特別の経済的出損をした事実は伺われないことが減額に影響している。
婚約破棄の理由 男性が浮気をしており,男性から一方的に婚約破棄

〈事案②〉

請求者 女性→男性
請求額→認容額 請求額500万円→認容額250万円

判断の理由 男性から結婚を申し込まれ男性との結婚生活を夢見て準備を重ねてきたのに,男性に浮気相手がおり,しかも妊娠させていたこと,そのため女性が知り合いのいない土地で体調を崩したこと,男性とその父が女性を残し浮気相手との面会に行ったときの女性の悲痛,母親に付き添われて実家に戻った女性の心痛などを考慮した。
婚約破棄の理由 男性に浮気相手がおり,その女性を妊娠させていたため,女性から婚約破棄

〈事案③〉

請求者 女性→男性
請求額→認容額 請求額600万円→認容額80万円

判断の理由 女性が20歳代から30歳代にかけての10年以上交際していたため,その間に,不妊治療に適切な時期を逸したこと,婚約破棄によって,円形脱毛症に罹患するほど多大な精神的苦痛を受けたことが認められることが増額に影響している。
他方で,婚約から婚約破棄までの期間は約1年にすぎないこと,それまでの交際期間も無駄ではないことなどが減額に影響している。
婚約破棄の理由 男性から一方的に婚約破棄

〈事案④〉

請求者 女性→男性
請求額→認容額 請求額450万円→認容額300万円

判断の理由 男性の一方的な婚約破棄のほか,男性が女性を熱心にイギリスに来るよう誘っていたこと,女性がそれまでの勤務先を退社して,元夫との長女とともに渡英したことなどを考慮した。
婚約破棄の理由 男性が深夜まで帰宅せず,また女性と旅行に行くなどしたうえ,男性から一方的に婚約を破棄

〈事案⑤〉

請求者 女性→男性
請求額→認容額 請求額1000万円→認容額300万円
判断の理由 婚約期間約9か月という事案で,男性の暴力がひどいために婚約を破棄せざるを得なかったこと,女性がこれによって受けた精神的苦痛は甚大であることが考慮されている。
婚約破棄の理由 男性の暴力に耐えきれなかったため,やむなく女性から婚約破棄

〈事案⑥〉

請求者 男性→女性
請求額→認容額 請求額1000万円→認容額100万円
判断の理由 女性が婚約から1年半後に別の男性からプロポーズを受けたため,婚約を破棄したこと,男性が心療内科にかかり治療を受けていることが増額に影響している。
他方で、男性が,婚約破棄後に女性に対して連絡をとろうと電話・メールをしたり,女性宅をいきなり訪ねたり,プロポーズをした男性に対して訴訟を提起したことしたなどが減額に影響している。
婚約破棄の理由 女性が別の男性からプロポーズを受けたため,女性から婚約破棄

4 まとめ

 以上のように,慰謝料の額は様々な事情を考慮して判断されるものですので,この事案ならいくらくらい認められるということは容易に言えるものではなく,弁護士や裁判官といった専門家によっても判断が分かれ,経験の浅い弁護士ですと正確な見通しを立てることが難しいものです。相談先の弁護士によっては高額の見通しを立てることもあるでしょうし,相談する方としては,高額の見通しを立ててくれる弁護士に惹かれてしまうのも仕方ありませんが,上記の通り,慰謝料は,事案や判断者によって金額が変わり得る性質のものです。また,請求額が高額になってしまうと訴訟費用や着手金などが高額になってしまうことになります。そのため,弁護士に依頼するとしても金額だけを意識するのではなく,なぜその金額になるのかをしっかりと説明してくれる弁護士に依頼すべきでしょう。
お困りの方はぜひ同種事案について経験豊富な弁護士に相談するようにしてください。
以上

 

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