借金問題

貸金返還請求訴訟中に相手方が破産した場合,現在進行中の裁判はどうなるのでしょうか?

2017.11.07
借金問題|弁護士ニュース

貸金返還請求訴訟中に相手方が破産した場合,現在進行中の裁判はどうなるのでしょうか?

【Aさん】
私は,Bさんに100万円を貸していましたが,一向に返済してくれないため,先日貸金返還請求訴訟を提起しました。Bさんは,裁判において,「100万円は贈与だから返す必要はない金だ。」と主張して貸金の存在を争っています。契約書はなく,次回が証人尋問予定となっていましたが,本日,Bさんの弁護士から,Bさんが破産する予定である旨の連絡がありました。訴訟係属中に相手方が破産した場合,現在進行中の裁判はどうなるのでしょうか。

今回は,訴訟係属中に相手方が破産した場合,裁判はどうなるのかについて福岡の弁護士がご説明していきたいと思います。

1 相手方破産で係属中の訴訟は中断する?

相手方が裁判の途中で破産した場合,裁判の内容によっては進行が中断します。破産手続が開始されると,平時の場合と異なり,多数の債権者が破産者の限られた財産を奪い合う事態となりますので,破産法は,全債権者に対する平等弁済の要請から,破産手続き開始決定と同時に債権者の個別的な権利行使を禁止しています。その結果,破産者に対して裁判を通じて支払いを請求している場合には,裁判手続が中断することになります。
以上の通り,裁判手続が中断する理由は,全債権者に対する平等弁済の趣旨ですから,全ての裁判が中断するわけではなく,配当の対象となりうる破産者の財産に関わる訴訟(これを,「破産財団に関する訴訟」と言います。)のみが中断します。
そのため,破産財団に関する訴訟とは無関係な訴訟,例えば,親子関係不存在確認訴訟等の身分関係訴訟や,刑事事件などについては中断しません。なお,離婚訴訟については,離婚請求のみの場合は純粋な身分関係訴訟ですので中断しませんが,財産分与や慰謝料請求を伴う場合には,その部分については「破産財団に関する訴訟」にあたりますので中断することになります。

2 中断した裁判はどうなるの?

①係争中の請求権が破産債権の場合

 通常の民事訴訟では,裁判の中で,契約書等の書証を提出したり,尋問で契約時の状況を証言する等して,請求中の権利(Aさんの場合は貸金)が存在することを主張・立証していきます。
 しかし,破産手続きの場合は,まずは債権者全員に債権の金額や内容,優先順位等を書面で届出(自己申告)してもらい,その結果を破産管財人が確認・調査するという手順を踏みますので,破産管財人の調査が終わるまでは,裁判手続が中断します。
 そして,調査の結果,請求権の内容や金額等について異議なく認められた場合には,もはや係属中の裁判は無意味ですので当然終了となり,債権の金額と存在が確定します。
 他方で,債権の内容や金額等について破産管財人や他の債権者から異議が出た場合には,異議を主張する者を当事者に加えて裁判をする必要があるため,中断中の裁判が復活することになります。この場合,Aさんのようにまだ1審の途中で,請求中の権利について何ら判決も出ていない場合には,Aさんの方で異議を述べる相手方を被告に加える申立てをする必要があります。逆に,既に第1審で貸金について認容判決が出ていたが,相手方が控訴して控訴審の途中で相手方が破産したような場合であれば,異議を述べた者(管財人や他の債権者)の方で裁判を続行する手続きをとる必要があるとされています。
 そして,最終的に判決で債権額が確定されることになります。 

②係争中の権利が破産債権ではない場合

 たとえば,Aさんが,今回の訴訟で,Bさんに対し,100万円だけでなく,過去にBさんに貸したまま返されていないブランド品の時計についても返還を求めていたとします。この場合,AさんがBさんに対して時計の返還を求める権利は,Aさんの「所有権に基づく引渡請求権」ですので,破産債権ではありません。このように,所有権に基づく引渡請求権や所有権確認の訴え等,破産債権に関しない請求権の訴訟については,中断中の訴訟は破産管財人が引き継いで継続することになります。よって,Aさんは,管財人を被告に切り替え,時計の返還を求める訴訟を続行することになります。

3 訴訟で権利が確定した場合

 係争中の権利の存在が,最終的に裁判で確定した場合,当該権利が破産債権の場合は,破産債権者表に記載され,配当を受ける権利が認められます。もっとも,結局は破産債権のため,財産が残っていれば配当を受けられますが,財産がない場合や免責決定が出てしまえば,せっかく訴訟で勝ち取っても回収できないのが現実です。

4 まとめ

 以上の通り,訴訟係属中に相手方が破産した場合,破産財団に関する訴訟は中断し,破産手続の規律に服することになります。破産債権に関する訴訟の場合は,結局は裁判で勝ち取っても,配当が回ってこない可能性も多いにありますので,その後の手続をどのように進めるかについては,一度破産手続に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めします。

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