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労働時間とは~どこからどこまで?~

2019.04.10

現代では、過重労働や未払い残業代によって労働時間というものが取り沙汰されていますが、そもそも労働時間とはどこの部分を指すのでしょうか。
休日の自学自習の時間、研修への参加、休憩時間、待機時間などが労働時間に当たるとして、裁判になっているケースも多々あります。
ここでは、この労働時間の該当性というものについて考えていきたいと思います。

1.過去の判例

労働時間の該当性をめぐっては、過去さまざまな裁判が行われてきました。
例えば、電気設備の設計を行う会社において、「自社の製品を家族や親せきに販売しましょう」という取組に要した時間、「WEB上での学習に要した時間」が労働時間に該当するとして時間外・休日労働手当が請求されたという事案です。

会社側は完全任意であり、業務命令でもないため、労働時間には該当しないと主張しました。
しかし判決では、①一人ひとり年間の売り上げ目標が設定されていた②上司が達成状況を評価していた③達成状況が社内システムで把握されていたなどの点をふまえて、これらは指揮監督下にあったとして、割増賃金を支払うよう命じました。

また、WEB上での学習に関しても、会社側は単なる自学自習であるため労働時間ではないと主張しましたが、結果としては労働時間であると判断されました。

理由としては、①学習内容と業務内容が密接に関連していたこと②上司がこの学習によるスキルアップを明確に求めていたこと③学習状況が管理されていたことが挙げられていました。

2.業務性と労働の過密性

過去の判例をみていくと、ある観点から判断がなされており、それは「業務性」「労働の過密性」という2点になります。

そもそも労働時間とは、過去の最高裁の判例で次のとおり示されています。

「労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない」

(三菱重工業長崎造船所(一時訴訟・会社側上告)事件=最判平12・3・9労判778・11)

つまり、労働者が使用者の指揮監督下にある状況を労働時間と定義づけたのです。

そのため、裁判の傾向としては、研修時間や休日の自学自習等の時間が業務性、つまり使用者側からの明確な指示に基づいたものであったかどうか、日々の業務と密接に関わっている内容かどうか、というところで判断されてきています。

また、労働時間には具体的な作業をしている時間だけではなく、待機時間や手待ち時間も含まれていますが、休憩時間は労働者が自由に使える労働から完全に解放された時間のことを前提としていますので、労働時間とは考えられておりません。

しかしながら、「完全に解放された時間」という定義のため、その休憩時間が労働時間であったとして裁判になった事例も多々あります。

例えば、ビルの警備員が休憩や仮眠の時間も労働時間に当たるとして時間外割増賃金を求めてきた事案がありました。

判決では、①休憩中であっても警備室に来訪する人の対応、電話の対応をしなければならなかった ②勤務中の同僚のサポートをするよう定められており、実質行動が制限されていた ③仮眠時間の帰宅を禁止されていた ④不測の事態がおこったときに直ちに動けるよう制服等を着用したままだった という点が挙げられ、本件においては労働時間に該当するとの判断が下されました。

一方で、休憩時間や仮眠時間が労働時間ではなかったと判断された事例もあります。
こちらもビルの警備員ですが、①仮眠室で寝間着に着替えて仮眠をとっていた②不審者等の対応が必要になっても勤務中の警備員が対応し、仮眠中の同僚を起こすことはなかったなどという事実関係があったため、この時間は自由を与えられ業務を完全に手放せていたとみなされました。

3.その他事例

実務において、休憩時間や研修時間だけではなく、労働時間に当たるのかどうかの判断が難しい時間があります。
例えば、業務開始前の着替えや清掃、業務終了後の片づけが労働時間に含まれるのかがよく問題となります。
扱い方としては、ここでも使用者側の指揮命令によって、それらが義務的になされているのかで判断します。

研修や朝礼、ミーティング等については、参加の自由が完全に認められていれば、原則として労働時間には該当しません。

しかしながら、以下の状況が少しでもみられるのであれば、労働時間とみなされる可能性があります。
①上司からの指示
②昇給に影響する
③職場の雰囲気的に参加せざるを得ない状況

また、出張に伴う移動時間は、労働をする場所への通勤と判断されるため、労働時間ではないとされています。
ただ、その移動に業務の意味合いが含まれている場合、例えば荷物の運搬が出張の目的だったりするのであれば、その移動時間は労働時間に該当された判例があります。

4.まとめ

労働時間と一括りにいっても、労働時間とみなされる時間、みなされない時間があり、実務での取扱はなかなか難しいというのが現状です。

裁判所の判断ポイントは、やはり使用者の指揮監督下にあったかどうかが重視されていますので、明確にするように心がけましょう。