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労働時間の管理から考える時間外労働について

2019.04.24

メディアで日本の働き方問題が取り上げられるようになり、多くの人が自身の労働環境について考えるようになってきています。
その中で、一番裁判にまで発展する事例として挙げられるのが、時間外労働に対するトラブルです。
ここでは、時間外労働の取り扱い方について説明したいと思います。

1.はじめに

法律によって、1日の労働時間は8時間、週については40時間以内と定められており、これを超えて労働をする場合は、割増賃金を支払わなければならないとされています。

この時間外労働をめぐって、労使間で未払い残業代の有無の論争に発展し、裁判になるケースが多々あります。

裁判の中では、時間外労働を行ったかの事実関係のほか、勤怠管理をしていなかった場合の時間外労働の認定や、労働者による自発的な時間外労働の取扱い方などが問題となることがあります。

2.過去の裁判・審判例からみる時間外労働

過去の裁判例をみていくと、時間外労働と認められた事例と認められなかった事例があります。

ある会社に長年勤めていた社員が十分な割増賃金が支払われていないとし、割増賃金や遅延損害金を請求しました。

使用者側は、会社の給与規程には「会社の命令によって残業を行った者に割増賃金を支払う」旨が明記されており、また、この社員には多数の補助者をつけていたため、時間外労働の必要性はなかったとして、未払いはないと主張しました。

本件は地方裁判所だけでなく高等裁判所まで争われ、いずれも労働者側の主張が認められ、1,000万を超える割増賃金等の支払いが命じられました。

理由としては、①担当する顧客数が他従業員と比較して著しく多かったこと、②職務日誌の記載内容からタイムカードの出退勤時間の裏付けがとれたこと、③会社代表者からの深夜勤務に対するねぎらいの言葉があったこと等が挙げられ、会社側も他従業員よりも著しい時間外労働者がなされていると認識があった(認識できた)ものとしました。

一方、認められなかった事案としては、会社側が時間外労働・休日労働に対する協定(通称36協定)が当時未締結であったため、時間外労働等を禁止した状態であったが、職員が割増賃金の支給がなくなることを懸念し、時間外労働禁止命令以降も残業を行い、その割増賃金を求めたものがありました。

裁判所は、使用者側は明確な理由のもと「時間外労働禁止」という業務命令を行っていたのにも関わらず、それに反し労働者の勝手な判断によって行われた時間外労働は労働時間ではないと示しました。

また会社側は、36協定締結までは時間外労働禁止の業務命令を繰り返し発し徹底していたため、使用者の指揮命令による時間外労働ではないと判断し、割増賃金の請求を全面的に否認しました。

3.労働時間の管理

前述の通り、労働者は原則法定労働時間内で働くことが決められており、時間外労働をする場合は36協定の協定範囲内でなければなりません。

そのため、使用者側としては、各労働者の労働日ごとの始業・終業を把握し、労働時間を管理することが求められています。

時間外労働の割増賃金の請求や労災時の注意義務違反等が裁判での争点になった際は、この労働時間管理を使用者側が適切に行っていたかも重要視されます。

では、使用者側が労働時間管理をきちんとしていなかった場合、割増賃金の請求はどう扱われるのでしょうか?

結論から述べると、労働者側から提出された資料等をもとに労働時間が推測されますので、労働者側に有利な判決が出ることがほとんどです。

やはり使用者側には労働時間を管理するという義務があるため、その義務を果たしていないために起こったこのような事案は、使用者側に責があるものと判断されることが多いです。

始業終業時刻の管理がなされていない場合の労働時間を判断する資料としては、以下のようなものが認められることがあります。

①業務日誌
②ソフト上の保存時刻
③システムのログやデータの作成・更新・保存時刻

使用者の管理外(例えば自宅などでのデータ作成)の時間も労働時間とカウントされる恐れがありますので、必ず労働時間は管理をしましょう。

そこで、具体的な労働時間の管理方法としては、2パターンが挙げられます。

①出退勤時間を使用者が毎日確認し、それを記録する
②勤怠管理システムやタイムカードを用いて確認、記録する

過去の判例においても、時間外労働の認定は、使用者が設置した機器によって打刻されたタイムカードの記載を重視するのが相当だとされており、労働者や使用者の恣意的な要素が加味されにくい客観的な記録を重要視しています。

なお、これらを基本要素として、時には使用者の残業命令書や労働者からの残業申請書などを求めることもあります。

しかしながら、直行直帰や出張が多いなど、タイムカードでの打刻が難しい場合もあります。このような時は労働者側からの自己申告に委ねざるを得ないため、使用者側は次のような対応をする必要があります。

①対象者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、きちんと自己申告をするよう説明すること
②労働者が申告する労働時間と実際の労働時間に相違がないか、実態調査を行うこと

これに加え、遠隔地で業務が終了した場合は、その都度連絡をもらって業務終了を確認する、外出先でも打刻が可能なシステムの導入を検討するなどをしたほうがいいでしょう。

物理的にどうしても無理な場合は、「みなし労働時間制」というものもありますので、直行直帰や出張等であっても労働時間の管理はしなければならないということは理解しておく必要があります。

4.まとめ

労働時間管理は義務といっても、労働者の業務内容や勤務形態によって、難しい場合ももちろんあります。

ただ、やはり労働時間管理をしていないと、割増賃金の支払を求められた際に、労働者の主張が認められてしまう恐れがあります。

そのたびに多くのコストがかかってしまいますので、そういったことを未然に防ぐためにも、労働時間及び時間外労働の管理は可能な限り行っていきましょう。