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労働基準法とは ~不当な身柄拘束の禁止~

2019.04.11

前回は労働基準法とは何か、労働契約において書面にて明示しなければいけないこと(絶対的明示事項)・口頭による説明でも問題ない事項(相対的明示事項)を中心にお話しいたしました。
今回は、不当な身柄拘束の禁止について見ていきたいと思います。

前回の記事はこちらから
労働基準法とは?~労働契約編~

1.不当な身柄拘束の禁止

不当な身柄拘束の禁止とは、

・賠償予定の禁止(第16条)
・前借金相殺の禁止(第17条)
・強制貯金の禁止(第18条)

上記の3つの禁止のことを指します。

(1)賠償予定の禁止
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

このように労働基準法の第16条には定められています。

例えると、「遅刻・早退したら欠勤控除とは別に3,000円マイナスとする。」

このような賠償額を予定とすることは違法であり、禁止されています。
労働者側が違約金の発生を恐れて退職ができず、事実上労働が強制させられてしまうという事態を防ぐ趣旨です。
賠償額が予定されている契約は、親権者・身元保証人が支払義務を負うような契約も含まれます。

なお、あくまで16条では金額を予定・決定していることが禁止なのであり、現実に起きた損害について賠償請求することを禁止したものではありません。

(2)前借金相殺の禁止
使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。

このように労働基準法第17条には定められています。

この条文は金銭貸借関係と労働関係を分け、債務者の身分的拘束を防止する法律です。
会社からの借金を返すために労働が強制される事態を防ぐ法律です。

重要な点として、貸付原因・期間・金利の有無など総合的に判断して、当該貸付において労働が条件となっていないことが明白な場合には、本条は適用されません。

また、賃金による相殺は、労働者が望めばそれは違法とはなりません。もっとも、その場合でも、紛争予防の観点から相殺合意書を書面で取り交わしておくべきです。

(3)強制貯金の禁止
①使用者は、労働契約に附随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をしてはならない。
②使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理しようとする場合においては、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出なければならない。

この法律はあくまで、強制貯金により労働者の足止めになったり、賃金が事業資金として流用されて返還が困難になったりすることを防止するために存在しています。

従って、任意(労働者から貯蓄金を委託されて管理すること)であればその貯金は認められることになります。

(4)任意貯金の方法

任意貯金は「社内貯金」と「通帳保管」の2つに分類されます。
各手続に関する要件の比較は以下の通りです。

要件

①労使協定(貯蓄金管理協定)を締結し、所轄労働基準監督署に届け出ること
②貯蓄金管理規程の作成・周知義務
③社内貯金であれば利子をつけること(利率の最低限度は年5厘)
④社内貯金をする使用者は毎年3月31日以前1年間における預金の管理状況を4月30日までに所轄労働基準監督署に報告すること
⑤労働者が返還を請求したときは遅滞なく返還すること

社内貯金 通帳保管
労使協定の締結 必要(届出も必要)
貯蓄金管理規程 必要(届出は不要・周知は必要)
最低利率(年5厘)の義務 あり なし
管理状況報告 あり なし
貯蓄金保全措置 あり なし
中止命令 可能

2.注意すべき点

以上の通り、各条文上は、禁止事項が記載されていますが、いずれも労働者の意に反する強制労働の禁止を趣旨とするものですので、その趣旨に反しない場合は、規制が及びません。

そのため、既に述べたように、第16条(賠償予定の禁止)については、現実に起きた損害について賠償する予定であることを記載しても問題ありませんし、第17条(前借金相殺の禁止)は労働者が望めば債権と賃金の相殺は問題ありません。

第18条(強制貯金)に関しても労働者が望んで、使用者側がそれに応じ諸制度を整備すれば良いわけです。

3.まとめ

以上の通り、労働基準法では、労働者の不当な身体拘束を禁止するために各種制限がなされています。

世の中の企業には、この規制を知らずに、これらに抵触する内容の就業規則や誓約書を使っている会社が多数あります。

これらの書式は、何か企業にとって損害があった時のための事前対策として設けられていることが多いですが、その対策についての記載方法に問題があっては元も子もありません。

改めて、労働者にとって不利になっていたり、規則・誓約書により労働者を拘束してしまっていたりしていないかどうかを確認する必要があるでしょう。
また、労働者側も自分が知らないうちに拘束されている状況に追い込まれていないかどうか確認してみても良いかもしれません。