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テレビ製作において注意すべきポイント~著作権の取り扱い~

2019.06.25

これまで数回にわたり、テレビ番組製作において注意すべきポイントをご紹介してきましたが、今回は、「著作者が死亡している場合の著作権の取り扱い」についてご説明したいと思います。
さまざまな場面において、盗作や無断使用等で何かと話題になる「著作権」ですが、著作者が死亡していた場合、その権利はどうなるのでしょうか。

1.著作権とは?著作者の人格的権利とは?

著作者には、著作財産権(狭義の著作権)と著作者人格権の2つの権利があります。著作財産権は、複製権や上映権、貸与権、二次的著作物の利用権などが挙げられます。これらの権利は全部または一部を、家族や他人などに譲渡することができます。

一方、著作者人格権とは、自分の作品を自由に公表することができる権利(公表権)や氏名表示権、同一性保持権のことを指し、一身専属性の権利です。したがって、著作財産権とは異なり、相続したり譲渡することはできません。

しかしながら、著作権法第60条では、著作者が死亡した後の著作人格権についても、一定程度保護するべきとしています。

第60条 著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなつた後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。ただし、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合は、この限りでない。

以上を前提にして、話を進めていくことにしましょう。

2.著作者が死亡している場合の許諾申請

(1)著作者死亡後、著作権は70年間保護される

ある写真を、テレビ番組内で使用するため許諾申請を行おうとした際、撮影した写真家が今から60年前に死亡していたとします。この場合、そもそも著作権の許諾申請は必要なのでしょうか。許諾申請が必要な場合、誰に著作権の使用申請を行えばよいのでしょうか。

著作権法では、著作者の権利を認め、著作権を保護する目的としてこれまで「著作者の死後50年間は保護期間(映画についての保護期間は70年間)として存続される」としていました。しかし、著作権法は、平成28年に環太平洋パートナーシップ協定の締結及び環太平洋パートナーシップ協定に関する包括的及び先進的な協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律(以下、「TPP整備法」といいます。)により改正されました。
そのため、現在は原則全ての著作物の保護期間が「著作者の死後70年間」に変更になっています(著作権法第51条以下)。

ですので、TPP整備法が制定される以前でしたら、今回の写真家の作品は許諾を得なくても使用することができていましたが、保護期間が著作者の死後70年間となった現在の著作権法においては、許諾申請が必要となります。

では、誰にこの許諾申請を行えばいいのでしょうか。上の例であげたように、著作物を番組内で使用する際、許諾を得なければならないのは、著作者の相続人となります。既に説明したように、著作権には、著作者人格権と著作財産権(狭義の著作権)に分類されますが、著作財産権は相続の対象になるため、相続人が権利を引き継ぐこととなるのです。

そして、著作権を相続する人が決まっている場合には、その相続人から許諾を得ればよいのですが、著作者の死後間もない場合や相続で揉めている場合など、権利を取得する相続人がはっきり決まっていないこともあります。
そのような場合は、法定相続人や受遺者等、相続対象となる人全員から許諾を得なければなりません。

(2)財団や管理団体が管理するケースも

では、著作者に相続人が誰もいない場合はどうなるのでしょうか。この場合でも、生前贈与や遺言により、第三者に権利が譲渡されている場合には、当該受贈者・受遺者が著作権を取得するため、これらの者を相手に許諾申請を行います。
著作者が著名な作家や芸術家などの場合、財団や管理団体を設立し一括して著作物の管理を行っていることもあります。

このケースでは、遺族ではなく財団や管理団体に許諾申請をすることとなりますので、スムーズに番組制作を進めるためには、早い段階でどの人物や団体に著作権が移っているのかを確認し、承諾を得ることがポイントです。
なお、誰にも譲渡されず、相続する者もいない場合は、著作権法第62条1項1号に基づいて著作権は消滅することとなります。

3.具体例

例えば、著名な作家の死亡後に未公開の小説が発見された際など、書籍化やドラマ化を検討することもあるかと思います。このようなケースでも、遺族や権利を有している相続人へあらかじめ許諾申請を行うことで、公開後のトラブルを防ぐことができるでしょう。
この場合も、2.(2)のように、管理団体や遺言により第三者へ権利が譲渡されていることがありますので、誰が問い合わせの窓口になっているか確認が必要です。

また、相続人に著作権が譲渡された作品の使用許諾申請が認められたとして番組内で使用する際などに、すでに著作者本人は死亡しているからといって、作品へ必要以上の改変を行ったり、著しく誤解を招くような不適切な表現を用いて紹介するなどした場合、著作権法第60条により、その遺族や団体から侵害を受けたとして差し止めを求められることもあり得ます。

著作者本人がすでに死亡しているからといって、過度な改変などを行うことは好ましくないといえます。節度を守り使用するようにしましょう。

4.まとめ

今回は著作者が死亡した場合の著作権について見ていきましたが、著作者が生存している場合、テレビ番組の制作時において著作権は当然に重要な権利となります。権利の特徴や期間などをよく理解した上で許諾申請等を行うことが大切です。

また、死亡後に著作権の行方がわからなくなっており、相続人の判明に時間がかかることも予想されますので、制作に間に合わないといったことがないよう、スケジュールに余裕を持って調査、交渉や申請を進めて行きましょう。