企業関連

テレビ番組制作において気をつけるべきポイント~取材・撮影編~

2019.05.27

世の中には、テレビ番組に関わる仕事をされている方も多くいるかと思います。テレビ番組は、その制作会社や放送局のガイドライン、規程に則って制作されることがほとんどかと思いますが、中には「なぜこのルールを順守しなければならないのか?」と疑問に思ったり、「こんなケースはどうしたらいいのか?」という部分も出てくるのではないでしょうか。
様々なテレビ番組制作において気をつけるべき点を数回にわたってご説明します。
今回は、取材・撮影時においてのポイントです。

1.多くの通行人が行き交う中でのリポート・撮影

(1)映りこむ通行人の肖像権は?

大規模な電車の遅延などが発生した場合、その様子を朝の情報番組などでリポートをすることがあるかと思いますが、リポーターの背部に駅構内を行き交う通行人や、遅延情報を駅員に問い合わせている人など不特定多数の人が映り込みます。
もっとも、その混乱している様子を撮影し、大変な状況であることを視聴者へ知らせるという点で必要な場面ではありますが、このケースにおいて、リポーターの背部を歩く通行人に対しては許可なく撮影し放送しても良いのでしょうか。

(2)特定できなければ侵害にならない

ここで「肖像権の侵害」という言葉が思い浮かびますが、この場合、画面を通り過ぎる通行人を特定しようと思っても容易にはいきません。誰であるかすぐに特定できない場合、肖像権の侵害にはあたらないと考えられます。
また、たとえ本人を特定できたとしても、「約3分間のリポートのうち、数秒間映る」程度であれば、テレビが普及し誰でも映り込む可能性がある今日の社会においては生活上受忍限度の範囲内となり、肖像権の侵害とはならないでしょう。

しかしながら、朝の生放送番組で中継時に撮影した映像を、夕方の情報番組等で再度利用し放送する、といったケースもあるかと思います。その際、映像の中に映った通行人より「再度使用しないでほしい」というような要望が寄せられた場合、明確に拒否の意思を伝えられているので、映像の使用についてはよく検討せねばなりません。
加工等をし、本人の特定ができないようにして放送するか、映像自体を使用しないようにするか、その映像の重要性も考えて臨機応変に対応するようにしましょう。

(3)取材班であることを明確に

最近では高性能でありながらサイズの小さな撮影用カメラも登場し、機材の持ち出しも容易になった反面、撮影をしていることが分かりにくくなっているかもしれません。前述の通り偶然であったとしてもテレビに映ることを嫌う人も一定数は存在します。
通行人に対して、テレビ局や制作会社の名前を記した機材を用いたり、腕章をつけるなどして、報道機関が取材・撮影をしていることを分かりやすくしておくことも重要です。
そのような取材班を避けずに通行しているということは、撮影について承諾していると捉えることができます。
一方、取材班が撮影しているとわかると騒ぎ立てたり、故意に映り込もうとする人もいます。大きな騒ぎになり通行に支障が出るなどの可能性もありますので、状況に応じて撮影のやり方を適宜変えていくことも必要です。

2.事件が発生!取材・撮影を現場のすぐ近くで行う場合

(1) 事故現場などで張られた規制線の中へ入っても良い?

事件や事故が発生した際、周辺に「規制線」が張られるかと思います。多くの規制線は黄色いテープで、「立入禁止」などの文字が記されています。より近くで撮影するために、この規制線を越えて取材や撮影をすることはできるのでしょうか。

(2)規制線は複数の法的根拠に基づいて張られているもの

事件現場等で見られる「立入禁止」の線は、刑事訴訟法などの法的根拠により張られていて、事件の内容によっては複数の法令を適用し規制線を張っている場合もあります。
まず大前提として、警察官は実況見分、検証のために事故の現場を現状のまま保存すること、何も知らない人が立ち入らないように、証拠を動かすことのないように、立入禁止のテープやロープを張らなければならないなどと犯罪捜査規範で定めています。
しかしながら、これはあくまで規範であり法的な強制力はありません。後述する警察官職務執行法や刑事訴訟法を合わせて規制線を張ることで、規制線を超えた侵入者を退去、処罰することとなります。

(3)警察官職務執行法・刑事訴訟法に基づいた規制線

警察官職務執行法(警職法) 第四条では、「避難等の措置」として交通事故、危険物の爆発、その他人の生命や身体に危険がある場合など、危害を避けるために必要な限度内で避難、引き留める措置ができるとしています。
この法令に基づいて張られた規制線では、むやみに立ち入ると軽犯罪法違反となる可能性があります。
また、刑事訴訟法(刑訴法)第百十二条では、差押状、捜索令状を用いて現場検証等を行う際、許可を得ない出入りを禁止することを定めています。こちらも規制線を張り現場検証を行っている場合、立ち入ると警職法同様に軽犯罪法違法となり得ます。

(4)道路上での規制線

交通事故などでは道路上に規制線を張ることがあるかと思いますが、これは道路交通法に基づき張られる規制線になるでしょう。道路上の危険を防ぐために歩行者・車両の通行を禁止また制限することができると定めています。
車両の侵入については処罰の対象になる可能性がありますが、歩行者に対しては罰則がなく、立ち入っても道路交通法違反とはならないとされています。しかしながら、規制線は複数の法令により張られている場合が多いですので、警官が制止したにも関わらず立ち入るなどした場合、警職法等により軽犯罪法違反となることもあります。

(5)どの法令に基づいた規制線か?

以上の法令などから、規制線を張っている場合でも状況によっては立ち入ることができるかもしれませんが、その規制線がどの法令に基づいて張られているのかをすぐに判断することは不可能に近いです。
捜査の取材で立ち入りが必要である旨を警察官に申し入れた場合、ある程度許容して立ち入りを許可することもあり得ますが、その際も警察官の指示に従うといった制限の中で取材をすることとなるでしょう。
いずれにしても、捜査の妨害とならないよう、注意を払いながら取材する必要があります。

3.まとめ

日本でのテレビの本放送が開始されてから60年余りになりますが、放送技術の向上や機材の高性能化、さらには交通網が発達したことにより、取材先へ向かい映像を撮影、その場で放送することが容易な世の中になってきました。
高性能カメラで撮影された映像では、個人を特定しやすくなり撮影に対しての苦情等も多く寄せられるかもしれません。しかしながらその高性能カメラにより、規制線を超えずとも、遠くからはっきりとした事件現場の映像を撮影することができるようになったのも事実です。取材時において適用される法律や法令を理解し、適切な取材・撮影を行っていきましょう。