企業関連

RPA推進で想定される法律的課題 ~社会科見学体験記~

2019.05.22

約1ヶ月前に、普段は立ち入りが出来ない【90%が自動化されたオフィス】に社会科見学に行ってきました。

RPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション=機械学習・人工知能によるホワイトカラーの業務効率化)が推進され90%が自動化されたオフィスのショールームに招待して頂き、お話を伺うことができました。実際に90%が自動化されたオフィスというのは、ほぼ何もないような空間で、一部に機械を人間が監視するというモニタールームがあるような場所でした。

管理者の方の意見も聞いてきたので、そこで見聞きしたものを踏まえつつ、今回はそれにより生まれるだろう法律問題について考えたいと思います。

1.まえがき

2020年には小学生のプログラミング授業が必修になるなど、現在、私達が思っている以上に、時代の大きな過渡期にあります。第四次産業革命といわれるなど、人間のあり方が今後大きく変わることが予想されます。機械の精度は日に日に増していますので、本来であれば日に日に人が楽になるはず・・・ではあるのですが、そのような実感がある方はあまりいらっしゃらないと思います。

RPAを推進しているセンターの管理者とお話をする機会があり、その際に色々と今後の予測をきいてみました。「私達は職につくことで失業者概念を生み出していると捉えることもできるが、機械化をすすめるということは失業者概念を最終的に消滅させうるものではないか?」との問いを投げたのですが、「失業者という概念を消滅させることは、現時点の技術ではまだ不可能と考えられる」との回答でした。自動化が浸透して私達が働かなくてもいい社会が実現するのはもう少し先で、現段階ではモニタリングや思考を人間が担うようになると仰っていました。

2.RPAによる配置転換や異動の法律問題

さて、現在でも銀行などをはじめとしてRPAを推進している企業は多数あると思うのですが、RPAがある程度進行してきたところで生ずると考えられるのが配置転換や異動の法律問題です。
身近なところで、大企業の自動電話を例にとりましょう(電話をかけると、自動音声が流れ、Aの手続の方は1をBの手続の方は2をというような音声が流れるものです)。自動電話は行政も採用していて、これにより的確に担当者へつなぐことができます。これで主に削減できるのは交換台や交換手です。必要最小限の交換手さえいればよいことになります。

そこで、会社に自動電話を導入するとして、その後の人の問題をどうするかというところに法律はかかわってきます。担当業務をフレキシブルに定めている場合は、比較的容易に配置転換を行うことができるかもしれませんが、そうでない場合は事前の打診を要することになりそうです。以下に労働基準法を引用して説明します。

労働基準法の定めによると、労働条件は労働契約の際に明示することとされています。

(労働条件の明示)
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
2 前項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。

厚生労働省令である労働基準法施行規則にはこのような定めがあります。

第五条 使用者が法第十五条第一項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件は、次に掲げるものとする。(中略)第四号の二から第十一号までに掲げる事項については使用者がこれらに関する定めをしない場合においては、この限りでない。
(中略)
一の三 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項

仮に労働条件を交換手業務として労働契約を結んでいるAさんがいたとして、RPAによって電話が自動化された場合に、当然交換手の仕事に人間が関与することはなくなりますから、Aさんは別の部門に回ることとなります。しかし、労働条件は交換手業務としていますので、Aさん側から労働契約を解除されてしまうリスクがあるのです(労働基準法15条2項)。

RPAが進むと、人員を他の部署(例えばモニタリングを行う部署等)に異動させることになります。任意にスタッフが全員人事異動に応じる場合は問題がないのですが、そうでない場合は最悪退職が相次ぐなどの人材流出の危険性もあります。RPAで業務効率化・経営の合理化を目指していたのに、配置転換で揉め事を起こしてしまってはかえって不合理を招きます。

スムーズな配置転換も戦略の一環として組み込まれているかもしれませんが、それが法律に則って問題なく行えるかという問題は残るのです。人の問題を起こさないために外部の法律事務所に委託し、契約書等の評価や配置転換の交渉をすることがRPAを進めていくには必須の事項になります。

3.まとめ

RPAの推進は、利便性が高いものです。全体として自動化された場合は効率的な業務遂行が可能になります。例えば単純な作業であれば、ほぼ客観的指標が出るというものもありますのでその意味では査定の負担が減りますし、社員に公平性を示せることが可能になります。また、採用の場面でも役立つかもしれません。
 
しかしながら、これらによって生ずる法律の問題があり、法律の問題を意識しながらRPAを推し進めなければ、業務の合理化が失敗に終わる可能性もあるので、RPAを推進している事業者の方は、スムーズにRPAを完了させるためにも、法律事務所と連携して、人的側面にも着目して実行を継続すべきでしょう。