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生前の相続対策

遺産の価格はどうやって決めるの?

2017.09.03

遺産の価格はどうやって決めるの?

<相談内容>
父が5年前に亡くなり,相続人は私と姉です。遺産分割の方法は,父の遺産である土地を私が単独で取得し,その評価額の半額を姉に支払うということになりました。姉は「あの土地はお父さんが亡くなった時4000万円の価値があった。」と言いますが,先日の固定資産税評価額では3000万円となっていました。不動産の価格は,いつを基準に,どのような算定方法で計算すれば良いのでしょうか。

 遺産が現金や預貯金だけの場合には,取得割合さえ決めれば遺産分割がスムーズに完了します。しかし,遺産に不動産や株式があるケースでは,金額換算が必要になり,その評価自体で紛争になることも少なくありません。今回は,遺産の評価についてご説明していきます。

1 基準時

 遺産分割は,いつまでにしなければならないという制約はありません。そのため相続が始まって10年以上も話し合いがまとまらず,分割されていないというケースも珍しくありません。物の値段はその時の経済情勢に左右されるため,相続開始から時間が経つほど,いつを基準として遺産を分けるのかは重要な問題となってきます。
 この問題について,遺産評価の基準時は,分割時とされています。これは,もし相続開始時としてしまうと,上記の相談事例のように,分割しようとする現時点での価格が3000万円であるのに,過去の4000万円と評価するのは妥当でないからです。したがって,遺産分割時の価額で遺産は評価することになります。

2 評価の方法

 では,どのような方法で評価額を算出するか,それぞれの遺産について見てみましょう。

⑴ 不動産

 遺産分割の際,土地の評価は分割時点での時価を基準とします。時価とは,不特定多数の私人間の自由な取引が行われるとしたら成立するであろう値段のことです。実際に売るわけではないので,公的な評価基準などを参考にして評価します。
 評価基準には,公示地価,相続税評価額,固定資産税評価額があります。
 公示地価とは,国土交通省の土地鑑定委員会が毎年発表しているもので,各都市およびその周辺地域の標準地について,自由な取引がなされるとした場合の価格を算出したものです。しかし,標準地しか数値が出ていないため,相続財産である土地の値段は標準地から推測することになります。
 相続税評価額は,路線価方式(市街地の宅地)や倍率方式(市街地以外の宅地)等,税務上の方法で算出された土地評価です。これは全ての土地について数値が出るので,遺産分割の一つの目安となります。相続税評価額は概ね時価の8割程度だとされていますが,ある道路に面した土地はいくら,というように一定の基準に当てはめて自動的に算出されているため,不正確な面もあります。
 固定資産税評価額は,時価の7割程度とされており,この価格は各公共団体の窓口で調べることができます。
 また,建物の評価額を算出する場合,固定資産税評価額が一つの目安となります。または,現時点で同等の建物を新築したらいくらかかるのかという再調達原価から,今までの経過年数を割り引いた値段を算出するという方法もあります。
 以上のような基本的な数値や,不動産業者の査定額を元に協議をするのが一般的ですが,お互いが譲れない場合には,不動産鑑定士に依頼して,「鑑定」により価格を算出することもあります。不動産鑑定士の鑑定によって出された価格は,遺産分割の重要な基準となります。ただし,高額な鑑定費用がかかるため注意が必要です。

⑵ 株式

 上場されている株式や店頭登録銘柄など証券取引の対象となっている株式は,客観的な時価が明らかにされています。そのため,分割時に最も近いところの価格,もしくはその一定期間をとった平均値によって算定します。
 しかし,上場されていない株式は評価が困難です。その場合,相続税評価額を参考にして,過去3年分ほどの決算書類をもとに価格を算定することが多く見られます。しかし,貸借対照表や損益計算表が正しく作成されていない場合や,会社の将来性も加味するべき場合には議論がまとまりません。そのように協議で折り合いがつかなければ,公認会計士に鑑定を依頼することもあります。ただし,株式の鑑定費用は不動産の鑑定と比べても相当高額となるようです。

⑶ 高価品,書画・骨董など

 宝石,金塊等の高価品や,書画・骨董等の美術品が遺産となることもよく見られます。この場合は市場価格や購入価格を参考にして,相続人の合意により評価額を算定することになります。また,最近ではインターネットオークションにかけて,売却をして代金を相続人で分割するという合意もなされています。
 また,家財道具など,交換価値の低い物については,相続人間で協議をして形見分けの機会を設ける等,遺産分割の対象から除外する扱いがなされることが多いようです。

4 まとめ

 今回は,遺産の評価の基準時と,評価方法についてご説明しました。遺産がいくらかという問題は最終的な取り分を大きく左右するため,ご自身の納得できない額で合意をしてしまわないよう気を付けてください。
このとき,協議にて評価額を決めるべきか,費用を負担してでも専門家に鑑定を依頼すべきか,鑑定した場合の見通しを持っていなくては決められない場面があります。必ず相続に強い弁護士に依頼した上で,正確な見通しを持って相手方との交渉を進めてください。

 

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