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遺言書作成・遺言執行者の選任

祖父が亡き父に遺言を残していた!誰が相続する?

2017.10.09

祖父が亡き父に遺言を残していた!誰が相続する?

<相談内容>
祖父が亡くなり,「長男に全ての遺産を相続させる」という内容の遺言が発見されました。しかし,祖父の長男である私の父は去年既に亡くなっています。祖父の相続人は,父の弟である私の叔父と,代襲相続人である私ということになります。叔父は「お前の父さんは既に亡くなっているからこの遺言は無効だよ。法定相続分通り,遺産は私とお前の2分の1ずつ分けよう。」と言ってきました。しかし,私としては,元々父が全て相続するはずだったのだから,父の相続人である私が全てもらうべきだと思います。この場合,どうなるのでしょうか。

 この事例のように,「相続させる」という遺言を受けた相続人や,特定の財産を取得する遺言を受けた者(受遺者)が,遺言者よりも先に死亡していたというケースがあります。この場合,相続人や受遺者の相続人が代わりに相続することになるでしょうか。今回は,相続人や受遺者が先に死亡していた場合の相続について福岡の弁護士がご説明していきます。

1 遺贈の場合

 遺贈とは,遺言により,財産を第三者に渡す行為を言います。第三者は,相続人でも相続人以外の者でも構いません。遺贈の場合,遺言者の死亡以前に受遺者が死亡していたときは,遺言者が別段の意思表示をしていない限り,遺贈は無効となり,遺贈の目的物は相続人に帰属します(民法994条1項,995条)。

2 「相続させる」遺言の場合

 それでは,冒頭の相談のように,「長男に全ての遺産を相続させる」という遺言の場合はどう扱われるでしょうか。
 まず,前提知識として,遺言書に「相続させる」という表現が用いられており,遺産を渡す相手が相続人の場合において,当該相続させる旨の遺言は,遺贈と解すべき特段の事情がない限り,遺贈ではなく「遺産分割方法の指定」であると判断した最高裁判例があります(最判H3.4.19)。なお,「遺産分割方法の指定」とは,遺産分割協議を経ることなく,遺言者の死亡と同時に当然に指定された内容で相続が発生することを言います。そのため,例えば「長男に全ての遺産を相続させる」という遺言の場合,遺言者の死亡時に長男が生存している場合には,長男が当然に全ての遺産を相続することになります。

 それでは,冒頭の事例のように,長男(相続者の父)が,祖父より先に死亡していた場合はどうなるのでしょうか。相続させる旨の遺言を遺贈と考えると,遺言者の死亡以前に受遺者が死亡している場合にあたるので,前述の通り遺贈は無効となり,相談者は全部ではなく法定相続分(2分の1)の範囲でしか相続できないと考えられそうです。しかし,先程の最判H3.4.19では,特定の相続人に対して相続させる旨の遺言について,特段の事情がない限り,遺産分割方法の指定であって,遺贈ではない旨判断しているため,遺贈とは異なる取り扱いがなされるようにも思えます。この点については,最高裁判例がありますので,以下紹介します。

【最判平成23年2月22日】

被相続人の遺産の承継に関する遺言をする者は,一般に,各推定相続人との関係においては,その者と各推定相続人との身分関係及び生活関係,各推定相続人の現在及び将来の生活状況及び資産その他の経済力,特定の不動産その他の遺産についての特定の推定相続人の関わりあいの有無,程度等諸般の事情を考慮して遺言をするものである。このことは,遺産を特定の推定相続人に単独で相続させる旨の遺産分割の方法を指定し,当該遺産が遺言者の死亡の時に直ちに相続により当該推定相続人に承継される効力を有する「相続させる」旨の遺言がされる場合であっても異なるものではなく,このような「相続させる」旨の遺言をした遺言者は,通常,遺言時における特定の推定相続人に当該遺産を取得させる意思を有するにとどまるものと解される。

 したがって,上記のような「相続させる」旨の遺言は,当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には,当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係,遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから,遺言者が,上記の場合には,当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り,その効力を生ずることはないと解するのが相当である。

 少し難しいですが,内容を要約すると,結局は,「相続人Aに相続させる」旨の遺言をした場合,遺言者の意思としては「推定相続人であるAに遺産を取得させる」意思を示したものであって,「遺言者よりAが先に亡くなっていた場合には,Aの相続人Bに相続させる」意思まで示したとは解されないから,特段の事情がない限り,Aの相続人Bが相続(代襲相続)をすることはないと示して,代襲相続を否定しました。結局は,遺言者の意思をどう読み解くか次第です。
 冒頭の相談でも,遺言書の他の記載内容や,祖父の状況などから判断していくことになりますが,相談者が代襲相続するのは難しいと考えられるでしょう。その場合,叔父の主張通り,相談者と叔父が2分の1ずつ遺産を取得することになります。

3 遺言作成のポイント

では,遺言を作成する際,もし受遺者が先に死亡した場合にはその相続人に財産を与えたいと考えているときは,どのような方法を取れば良いでしょうか。
遺言者の死亡以前に受遺者が死亡してしまった場合,受遺者の死亡後,遺言者が改めて遺言をすれば問題ありません。しかし,改めて遺言を作成するのには手間がかかりますし,遺言者が認知症などになり意思能力を喪失している可能性もあります。
そこで,初めに遺言を作成するときに,受遺者が死亡してしまう事態に備えた文言を付けておくと安心です。例えば,以下のように遺言を作成することになります。

第1条 遺言者は,遺言者の有する一切の財産を,遺言者の長男Aに相続させる。
第2条 予備的遺言として,前記長男Aが遺言者より先に又は遺言者と同時に死亡したときは,前条により長男Aに相続させる財産の全部を,遺言者の孫Bに相続させる。

4 まとめ

 今回は,受遺者や相続人が遺言者より先に亡くなっている場合の相続についてご説明しました。ご自身は受遺者やその相続人に遺産を渡したいと思っていたとしても,受遺者が亡くなっていればその望みがかなえられないかもしれません。
 そこでご説明したように,受遺者が死亡してしまう可能性も考えて遺言を作成しておくことが重要です。遺言を作成する際は,法律の専門家である弁護士のアドバイスを得ておくと,不測の事態に備えることができます。公正証書遺言にしておくと安心ですが,自筆証書遺言を作成したいという場合にも,一度内容を弁護士に見せて確認してもらうことをお勧めします。

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