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遺言書作成・遺言執行者の選任

遺言の方式について

2021.06.11

遺言は、遺言者の最後の意思表示であり、遺言者の一方的な意思表示により効力が生じる単独行為です。したがって、民法が定める方式に従わなければなりません(民法960条)。これは、当事者が自由に作成すると、遺言書の偽造・変造が行われる可能性が高くなること、遺言者の真意を確定することが困難となるためです。

法律では、遺言の方式に関していくつか定めています。遺言書について調べたことがある方には、一体どれが何なのかわからいという経験をされた方もいらっしゃると思います。以下、遺言の方式についてみていきます。

1.普通方式の遺言について

1-1 自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者自身で、遺言書の全文、日付及び指名を書き、これに押印することによって成立する遺言です(民法968条)。全てを自身で書くことが要点であり(相続財産の目録を添付する場合は、その目録部分に限り、PC等で作成することも可能です。

ただし、この場合は、目録の全ての頁に署名押印しなければなりません。同条2項)、筆跡と押印から遺言者の真意、遺言の内容を明らかにしようとするものです。この方式が最も費用がかからず、内容を秘密にすることができます。一方で、紛失等の危険性や形式不備により効力が問題となることもありますので気を付けてください。

1-2 公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証人の作成する公正証書によってする遺言のことです。法律の専門家である公証人が、遺言者から遺言の内容を聞き、整理しつつ作成するため、証拠力が高いです。また、公証役場で保管されるため、滅失等の心配はありません。遺言者自身で筆記をすることができなくても、遺言の内容を公証人に伝えることができれば、この方式によることが可能です。

1-3 秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言の存在自体は明らかにしておき、内容は秘密にしておきたい場合に採用される方式の遺言のことです。この方式は、遺言書を秘密に保存するための方式であるため、書面自体に格別な方式がある訳ではありません。

ただ、封をして、公証人及び2名の証人の前で自己の遺言書であることを申述するといった特別な手続で、遺言書の存在を公証しておくことが必要となります。

2.特別方式の遺言について

2-1 一般危急時遺言

疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者について認められた遺言です。証人3人以上の立会いをもって、その1人に遺言の趣旨を口授し、これを受けた者が筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ等を行い、筆記が正確なことを承認した後、署名押印をします。

この方式によって行われた遺言は、遺言の日から20日以内に証人の1人又は利害関係者から、家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じません。これは、遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得られるかどうか一応判断しようとするものですから、家庭裁判所は、それが真意に出たものであるとの心証を得なければ確認することができません。確認の対象は真意の有無であって、遺言の効力の有無ではありません。

なお、一般危急時遺言を含む3-1から3-4までの特別方式の遺言は、遺言者が普通方式によって遺言をすることが可能になって6か月間生存した場合は、効力を生じません。

2-2 難船危急時遺言

この遺言は船舶が遭難した場合に、死亡の危急が迫った者について認められている遺言です。一般危急時遺言よりも緩和されており、証人2人以上の立会いをもって、遺言の趣旨を口頭で述べ、証人がその趣旨を筆記して署名押印することで足ります。また、証人の1人又は利害関係者から家庭裁判所に請求して遺言の確認を求めなければなりませんが、20日以内という期間制限はなく、遭難が解消した後遅滞なく請求すればよいとされています。

2-3 伝染病隔離者遺言

伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所に居る者は、警察官1人及び証人1人以上の立会いをもって遺言をすることができます。普通方式による遺言ができない場合に許される隔絶地遺言です。「伝染病」といいますが、実質上または法律上自由になし得ない場所にある者全てが適用対象となると解されています。

2-4 在船者遺言

この方式では、船長または事務員の1人及び証人2人以上の立会いをもって、遺言することができます(民法978条)。ここにいう船舶とは、航海で航行中の船舶に限られます。
船舶中にある者と同様に隔離された空間にあって、普通方式での遺言が困難な状況であれば、飛行機内でも認められます。

3.まとめ

以上のように法律では、様々な遺言の方式を定めています。
普通方式の遺言には、自筆遺言書、公正証書遺言、そして秘密証書遺言の3つの方式があり、特別方式の遺言には、一般危急時遺言、難船危急時遺言、伝染病隔離者遺言、そして在船者遺言の4つの方式があります。

後者の特別方式の遺言の中でも、一般危急時遺言と難船危急時遺言の2種類は、署名押印ができない危急にあることを前提としているため、口頭で遺言の趣旨を告げて証人に筆記させる方法による遺言が許され、それが真意に出たものであることは、家庭裁判所の手続において確認されます。

日常生活のなかでは、危急に迫った状況になることは滅多にないと思われますが、色々な方式の遺言があるということを知っていただければと思います。

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