生前の相続対策

婚外子を遺言で認知したい場合

2021.01.20

結婚した2人の間にできた子供であれば当然に法律上子供になりますが、結婚していない2人の間に生まれた子供は父親と法律上の親子関係を作るには認知という手続きを踏まなくてはなりません。

そして認知は、①胎児の間に行う胎児認知、②生まれてから認知届を提出して行う任意認知、③裁判所を通じて行う裁判認知、④自分が死亡した後に行う死後認知、⑤遺言書を用いて行う遺言認知があります。

今回はこの中でも遺言書を用いて行う遺言認知についてご説明するとともに、その際の具体的な遺言書の書き方についてご説明いたします。

1 遺言認知の要件

遺言認知を行う場合、①遺言書に認知する旨を明記しておくこと、②認知されるべき子供を特定しておくこと、③遺言認知でも実際に認知の届出を行わなくてはなりませんので、自分が死んだ後に遺言書を使って認知の届出を行ってくれる遺言執行者を就けておくこと、が必要になります。

①認知する旨を明記することは、「認知する」と書けば良いだけなので問題ないでしょう。②子供の特定については、世界中の人の中でピンポイントで1人の人を特定できるようにしなくてはなりません。そのため、氏名、生年月日、住所等可能な限りの情報で特定していきます。
母親の名前も記載することで特定しやすくなるでしょうから、母親の名前も記載しておいた方が良いでしょう。

2 遺言執行者選任の要否

③遺言執行者とは、遺言書に書かれている内容を実現する係のことです。通常は預貯金の解約や不動産登記、残された遺産を相続人に分配する作業を行うことがメイン業務になります。
しかし、遺言認知の場合には、その遺言書を使って認知の届出を行うことが遺言執行者の役目になります。

この遺言認知の場合、遺言執行者が届出を行わなくてはならないと法律上定められていますので、もしも遺言書に遺言執行者を定めなかった場合、まずは家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらうところから始めなくてはなりません。

確実に遺言執行者が必要な事柄になりますので、遺言書にきちんと遺言執行者を書いていれば遺言執行者の選任手続き等は必要なくなりますから、きちんと記載しておきましょう。

3 遺言認知の実情

ドラマみたいな話になりますが、遺言認知で大変なのはその後になります。
なぜわざわざ生前ではなく遺言書で認知するのでしょうか?
まだ生きてらっしゃる間に、普通に役所に認知届を提出すれば認知は完結します。にもかかわらず、わざわざ遺言書で行うからには、それなりの理由があるものです。
要するにそのような婚外子の存在を家族に言わないまま遺言書で認知するケースがほとんどになります。

旦那さんが不倫をした上で、外に子供ができ、それを家族には内緒のまま過ごしてきました。
本人にとってはその婚外子も奥さんとの間の子供も同じく子供ですので、どちらにも財産を残したいという感情が生まれるのは当然ですし、婚外子の方はずっと認知できておらず、戸籍の父親の欄が空欄のまま人生を過ごさせてしまった負い目もありますので、何かを残してあげたいと思うのは当然でしょう。
これを生前に家族に打ち明け、きちんと生きている間に説明をしておけば良いのですが、生前に認知をして揉めたくないため、遺言書で書いてしまっているのです。
そうなると、家族は父親の遺言書を見つけた時、その中に知らない子供の情報が出てきて、しかも認知すると書いており、それによって自分たちの相続分が突然減る事態に遭遇します。
後は容易に想像できますよね。本当にテレビドラマのようなことが世の中では稀に起こるものです。

遺言認知という制度が存在している以上、その制度の活用を否定するわけでは無いのですが、ドラマのような紛争に発展することが分かり切っているような方法をとると、困るのは残された家族です。この辺はきちんとしておきたいものですね。

4 遺言執行者の立場から見た遺言認知

上記の通り、遺言書で認知をする場合、後日遺言執行者が届出を行います。
その後、通常の遺言執行業務を行いますが、遺産を遺言書に沿って分配する以上、一定程度相続人の協力が必要なものです。
また、遺留分が侵害されるケースだと、遺留分減殺請求にも巻き込まれる可能性があります。しかし、遺言書で聞いたことのない子供の話が出てきて、しかも認知すると書かれており、それに伴って自分たちの相続分が減る事態になると、相続人としては相当感情的になるものです。
その感情論を受け止めながら遺言執行業務を行わなくてはならないため、親族の誰かが遺言執行者に就任することは絶対避けるべきですし、弁護士などの専門家でもなかなか簡単に引き受けてくれないものです。

生前のうちに信頼できる遺言執行者に就任すべき専門家を決めておき、しっかりと話をしておくべきでしょう。

5 まとめ

遺言認知はかなり特殊なものですので、確実に専門家に相談しながら遺言書を作成してください。