生前の相続対策

土地収用が行われる予定ですが、遺言書はどう書けば良いでしょう?

2021.01.17

自分が家を建て替えようと考えていたり、不動産を売却しようと考えていたりすれば、「ではその不動産は遺言書にどのように書き残せば良いのだろう?」と疑問が湧いてくるものです。
しかし、世の中には自分の意思に基づかずに不動産を取り上げられてしまうこともあるものです。それが土地収容です。

1 土地収用と遺言書

土地収用と聞くと、昔の話のように感じる方も結構いらっしゃいますが、全然そんな事はありません。大都市の中心部ではなかなかないかもしれませんが、一定程度の地方都市に行けば、道路の拡張や歩道の拡充、新しい道路を作ったりなど様々な瞬間に土地収容は行われるものです。

また、道路関係だけではなく、公共施設の建設予定地域であったり、遺跡の発掘のために土地収用が行われることもあります。要するに、自治体がその土地を必要としているときに行われるものですね。これが意外といろんなところで行われているものです。

そうなると、「自分の住んでいる地域が将来的に道路の拡張などで収用されて、明け渡さなくてはならない日が来ると聞いているが、そもそもの拡張計画が10年ぐらい先の話だし、予定通りに進むのかもわからないため、本当に道路が拡張されて自分の土地が収用されるのかどうかもイマイチよくわからない」、という方は思いのほかいらっしゃるのです。

2 土地収用を見越した遺言書とは?

本来は、将来土地収用があれば代替地が与えられるため、そのときにもらった代替地について遺言書を書き換えれば良いのですが、「書き換え忘れる」「そのときには認知症になっていて、遺言書を書き換えることができない」など、不都合が生じる可能性は十分にあります。

だとすれば、そのような計画があって、自分の土地が収用される可能性のある人は、それを見越した遺言書の内容にしておきたいところですね。

また、土地収用の場合は代替地を与えられるだけでなく、補償金が発生することも多々あります。
そうなると、発生した補償金で新たな不動産を購入してお住まいになられる方も結構いらっしゃるでしょう。

現在お住まいの地域が何らかの事情で将来的に土地収用が考えられる地域なのであれば、それを見越した上で代替地や補償金で取得した別の不動産等について遺言書の対象になるような書き方をしておかなくてはなりません。

3 具体的条文

では、具体的にどのような書き方をすれば良いのでしょうか。何らかの公共事業において土地収用が行われ、補償金を使って代替地を取得したり、補償金そのものを持ったままお亡くなりになることを想定し、以下のような条文で記載をしておきます。

第〇条 遺言者は、遺言者が有する次の不動産を長男田中一郎(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。
   【不動産の表示】
  ⑴ 土地 【省略】
  ⑵ 建物 【省略】
2 遺言者は、相続開始までに、前項記載の不動産の収用等により取得した補償金等によ  り、同不動産の代替資産として土地及び建物を取得していたときは、これらの土地及び建 物を長男に相続させる。また、遺言者が相続開始までに、前項記載の不動産の収用等によ る補償金等を取得した場合は、その相当額を長男に相続させる。

4 土地区画整理事業の場合は?

土地区画整理事業とは、都市計画区域内の土地について公共施設を設立するなどの理由により行われる事業です。この場合には、補償金の支払いなどではなく換地処分として、従前の宅地とほぼ同程度の宅地が当てがわれることになり、これを仮換地の指定と呼びます。

仮換地の指定の場合、新しい土地は新しい不動産になりますので、やはり別の登記簿が存在しますから、この場合も遺言書に記載しておくべきでしょう。

5 まとめ

以上の通り、土地収用や土地区画整理事業などによって、従前の土地と異なる所有状況になることは多々あり得るものです。
ご自身がお住まいの地域がそのような対象になり得るものであれば、それを見越した上で遺言書を作っておかなくてはなりません。

仮にこのような条文を入れずに一般的な記載方法で済ませる場合、「遺言者は、相続開始時点において保有する全ての不動産を長男に相続させる。」という包括的な条文で済ませるケースも多々あります。

ただ、特定の不動産を特定の相続人に相続させる旨の遺言書を作りたいのであれば、そのような包括的な条文では済まされませんので、やはり一つずつ作り込むしかありません。

このような土地収用や土地区画整理事業絡みの遺言書は、なかなかイレギュラーの遺言書になりますので、本当に相続に特化した専門家でなくては作成の経験すらないものです。
このようなイレギュラーな遺言書を作成希望の場合、必当事務所のような相続に強い専門家を選ばれるよう心掛けてみてください。