生前の相続対策

相続税対策とは?~生前贈与による相続税対策⑥~

2021.05.10
相続税対策とは?~生前贈与による相続税対策⑥~

前回は、生前贈与による相続税対策のうち、直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度の活用についてご説明させて頂きました。

今回は、前回に引き続き生前贈与による相続税対策のうち、贈与税の配偶者控除について詳しくご説明させて頂きます。

前回の記事はこちら:相続税対策とは?~生前贈与による相続税対策⑤

1.贈与税の配偶者控除はどのような場合に用いることができる?

長年連れ添った配偶者に対し、生前贈与を考えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
しかし、生前贈与となると、相続時精算課税制度を活用しない場合は、暦年贈与として基礎控除額110万円を超える贈与額に対して贈与税が発生します。

もっとも、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産のための金銭の贈与が行われた場合、先程お伝えした基礎控除額110万円の他に、最高2,000万円まで控除することができます。これを、贈与税の配偶者控除の特例といいます。
この特例を受けるためには、以下の要件を満たす必要がございます。

【要件】
①夫婦間の婚姻期間が20年を過ぎた後に行われた贈与であること(なお、婚姻期間には内縁関係は含まれず、婚姻期間の1年未満の端数は切り捨てて計算します。)
②配偶者から贈与された財産が、自分自身が居住する居住用不動産であること、又は居住用不動産を取得するための金銭であること
③贈与を受けた年の翌年3月15日までにその居住用不動産に住んでいること
④戸籍謄本等を添付して贈与税の申告を行うこと

なお、この特例の適用を受ける「居住用不動産」とは、国内の家屋又はその家屋の敷地(借地権を含む。)をいいますが、家屋と敷地を一括して贈与する必要はありません。

また、不動産の一部つまり共有持分を贈与の対象とすることも可能ですし、店舗兼住宅等のように、居住部分とそれ以外の用に供されている不動産が贈与された場合は、居住部分についてのみこの特例の適用を受けることができます。

2.この特例を用いる場合の注意点

この特例を用いる時には、いくつかの注意点がありますので順に説明させて頂きます。
まず、この特例は、同じ配偶者からは一生に一度しか適用することができません。また、この特例を適用して居住用財産の贈与が無税で行われた場合でも、別途不動産取得税や登録免許税が発生しますので注意が必要です。

不動産取得税とは、不動産を取得した人物に課される地方税であるところ、相続により不動産を取得した場合だと不動産取得税はかかりませんが、贈与の場合は固定資産税評価額の3%の税率で課税されてしまいます。

登録免許税は、不動産の譲渡に伴い所有権移転登記を行う際に法務局に収める手数料ですが、相続の場合だと固定資産税評価額の0.4%の負担に留まるのに対し、贈与の場合だと固定資産税評価額の2%の負担となります。この特例を用いることによって、最終的な配偶者の負担額が高くなる可能性も否定できません。

3.贈与の年の贈与者が死亡した場合について

それでは、婚姻期間20年以上である配偶者から居住用不動産の贈与を受けた年に贈与者に亡くなった場合、この特例を適用することはできるのでしょうか。

この点、被相続人から相続等によって財産を取得した人が、相続開始の年に被相続人から生前贈与を受けていた場合には、その贈与を受けた財産については所謂「みなし相続財産」として相続税の課税価格に加算されるため、贈与税は発生しません。

これに対し、相続開始の年に婚姻期間が20年以上である配偶者からの贈与によって受贈者が取得した居住用財産については、過去この特例の適用を受けたことがないのであれば、この特例の対象となった部分を相続財産に加算する必要はなく、相続税の対象とはなりません。贈与税の対象となるだけです。

したがって、この場合は、別途贈与税申告をする必要がありますので、贈与税申告を忘れずに行うようにしましょす。

これは、相続開始前3年以内の居住用不動産の贈与についてこの特例を用いた場合も同様であり、この特例の対象となった部分については、相続財産に加算されず相続税の対象とはなりません。

4.この特例を用いるメリット

相続税対策という視点で考えると、一般的には現金の贈与よりは不動産を贈与したほうが、節税効果が高いと言われております。
また、居住用不動産のうち土地と建物と比較して考えた場合ですと、建物については築年数の経過によって毎年相続税評価額が下がっていくのが通常であるのに対し、土地は地価の変動によって相続税評価額が上昇する可能性があります。

したがって、贈与を行うのであれば、家屋の贈与ではなく土地の贈与をまず行うべきでしょう。

更に、居住用不動産を夫婦で共有にしておくと、将来に当該居住用不動産を売却した際に「居住用不動産の3000万円特別控除」を各配偶者に適用することができますので、6,000万円迄の売却益に対して譲渡所得税が発生しないとういメリットもあります。

5.まとめ

今回は、生前贈与による相続税対策のうち、配偶者控除の特例についてご説明させて頂きました。配偶者控除の特例を用いることが相続税対策になるかは、対象不動産の固定資産税評価額等を基に具体的にシミュレーションを行う必要があります。

長年連れ添った配偶者への贈与を検討されている方は、一度相続関係に詳しい専門家にご相談されることをお勧め致します。