生前の相続対策

相続税対策とは?~生前贈与による相続税対策④~

2021.05.08
相続税対策とは?~生前贈与による相続税対策④~

前回は、生前贈与による相続税対策のうち、相続時精算課税制度についてご説明させて頂きました。
今回は、前回に引き続き生前贈与による相続税対策のうち、直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度の活用について詳しくご説明させて頂きます。

前回の記事はこちら:相続税対策とは?~生前贈与による相続税対策③~

1.直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度とは?

例えば、 孫に高校や大学の入学金、授業料等の教育資金を一括贈与する場合、暦年贈与であれば基礎控除額110万円を超える贈与額に対して贈与税が発生します。

もっとも、平成25年4月1日から令和3年3月31日迄の間に、30歳未満の子どもや孫(以下、「受贈者」といいます。)が、教育資金に充てるために、金融機関等との間の「教育資金管理契約」に基づき、受贈者の直系尊属(祖父母等)から①書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入れをした場合②書面による贈与により取得した金銭等で証券会社等にて有価証券を購入した場合、又は③信託受益権を付与された場合には、信託受益権又は金銭等の価額のうち1500万円までの金額に相当する部分の価額について、金融機関等の営業所等を経由して、教育資金非課税申告書を受贈者の納税地の所轄税務署に提出することにより、贈与税が非課税となります。この制度を、直系尊属からの教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度といいます。
そして、この制度を活用することのできる「教育資金」とは、以下の範囲の金銭を指します。

⑴学校等に対して支払われる次の金銭等

・入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費又は入学・入園試験の検定料等
・学用品の購入費、修学旅行費、学校給食費といった学校教育に伴って必要な費用

⑵学校等以外に対して直接支払われる次の金銭等で、教育を受けるために支払われるものとして社会通念上相当と認められるもの

・役務提供又は指導を行う者に直接支払われるもの
例:スポーツ、ピアノ、絵画、習字に係る指導への対価、施設の使用料

・物品の販売店等に支払われるもの
例:通勤定期券代、留学の為の渡航費等の交通費
なお、令和元年7月1日以後に支払われる「役務提供又は指導を行う者に直接支払われるもの」であって、受贈者が23歳に達した日の翌日以後に支払われるものについては、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講するための費用に限られます。

2.この制度を活用した場合の具体的な手続きについて

この制度を活用した場合、金融機関に開設した教育資金口座からの払出し及び教育資金の支払いを行った場合には、当該口座開設時に選択した教育資金口座の払出方法に応じて、その支払に充てた金銭に係る領収書等のその支払の事実を証する書類等を、以下の提出期限までに金融機関の営業所等に提出する必要があります。

⑴教育資金を支払った後に、実際に支払った金額を口座から払い出す方法を選択した場合

領収書等に記載された支払年月日から1年を経過する日

⑵⑴以外の方法を選択した場合

領収書等に記載された支払年月日の属する年の翌年3月15日

3.教育資金管理契約中に贈与者が死亡した場合について

教育資金管理契約期間中に贈与者が死亡した場合は、どのように扱われるのでしょうか。この場合、贈与者の死亡前3年以内に、受贈者が平成31年4月1日以後にその贈与者から取得した信託受益権等について、この制度の適用を受けたことがあるときは、贈与者が死亡した旨の金融機関等の営業所への届出が必要となり、原則として管理残額が相続又は遺贈によって取得したものとみなされます。

その結果、受贈者本人やその他の相続人など贈与者から相続等によって財産を取得した人それぞれの課税価額の合計額が、相続税に係る基礎控除額を超える場合ですと、相続税の申告期限までに相続税申告を行う必要があります。

もっとも、受贈者が贈与者の死亡日において、①23歳未満である場合②学校等に在学している場合、又は③教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けている場合は、相続や遺贈によって取得したものとはみなされません。

4.教育資金管理契約が終了した場合について

上記3では、教育資金管理契約期間中に贈与者が死亡した場合の取扱いについて説明致しました。それでは、この教育資金管理契約が終了した場合はどうなるのでしょうか。
まず、教育資金管理契約は、以下に記載する事由に応じてそれぞれ定める日のいずれか早い日に終了します。

契約の終了事由 終了の日
受贈者が30歳に達したとこ(その受贈者が30歳に達した日において学校等に在籍している場合又は教育訓練を受けている場合を除く) 30歳に達した日
受贈者(30歳以上の者に限る。)がその年中のいずれかの日において学校等に在学した日又は教育訓練を受けた日があることを、取扱金融機関の営業所等に届け出なかったこと その年の12月31日
受贈者(30歳以上の者に限る。)が40歳に達したこと 40歳に達した日
40歳に達した日
受贈者が死亡したこと 死亡した日
教育資金管理契約に係る口座の残高がゼロになり、かつ、その契約を終了させる合意があったこと 合意に基づき終了する日

そして、上記事由(ただし、受贈者が死亡した場合は除きます。)に該当したことにより教育資金管理契約が終了した場合において、非課税拠出額から教育資金支出額(学校等以外に支払う金銭については500万円が限度です。)を控除した残額があるときは、その残額が受贈者の上記事由(ただし、「受贈者が死亡したとき」を除きます。)に該当した日の属する年の贈与税の課税価格に算入されることとなります。

その結果、その年の贈与税の課税価格の合計額が基礎控除額を超える等の場合には、贈与税の申告及び納税が必要となります。

5.注意点

直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度について説明させて頂きましたが、この制度を活用するにあたっては、ご注意頂きたい点があります。
まず、この制度は、受贈者の信託等をする日の属する年の前年の合計所得額が1000万円を超える場合には適用を受けることができません。

また、この制度は次回説明する結婚・子育て資金の一括贈与にかかる贈与税の非課税制度との併用が可能となっていますが、結婚・子育て資金の一括贈与にかかる贈与税の非課税制度を受けるために提出した領収書等については、この制度では非課税の適用を受けることができませんので注意が必要です。

なお、この制度とは別に、扶養義務者間で行う必要な都度行われる生活費の贈与のうち、通常必要と認められるものについては、贈与税は非課税となります。

6.まとめ

今回は、生前贈与による相続税対策のうち、直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度についてご説明させて頂きました。

この制度は、本年の3月末日までの制度となるため、この制度の活用をご検討されている方は、早期に是非一度相続関係に詳しい専門家にご相談されることをお勧め致します。