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任意後見契約について

2021.03.22
任意後見契約について

近年、任意後見契約を締結する方が増加していますが、任意後見契約とはどの様な仕組みで、費用はどの程度かかるのでしょうか?

今回は任意後見契約の利点や欠点、契約から発効までの流れを説明していきます。

1.任意後見契約とは

現時点では私生活に何の問題もなく、契約等に必要な判断能力を有している方が、将来、判断能力が不十分になったときのために、自分の希望する人に自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部を委託し、代理権を付与する旨を、あらかじめ公正証書による任意後見契約によって決めておき、実際に判断能力が不十分になったときに、その契約の効力を発生させて、家庭裁判所が選任する任意後見監督人の監督の元、自分が選んだ任意後見人に、自分の希望する後見事務を行ってもらう制度です。

自分で任意後見人、後見業務の範囲を選択出来ることから、法定後見と比較しても(法定後見の場合、必ずしも被後見人の親族等、希望する者が後見人に選任されるとは限りません。)、より自分の意思が尊重される後見業務を行ってもらうことが期待できます。

2.関連する契約

任意後見契約時と併せて、見守り契約、財産管理委任契約、死後事務委任契約などの任意代理契約が締結されるケースが多くあります。以下に、各々の契約内容を簡単に紹介します。

①見守り契約
任意後見契約の締結後、その効力を発効するまでの間、本人と受任者が定期的な面談、電話連絡などを実施し、本人の生活状況、健康状態に変化がないか見守ることを目的とした契約となります。受任者は適切な時期に、家庭裁判所へ任意後見監督人の選任を求めることが必要となるため、その時期を見定めるためには、本人の状態を鑑み面談頻度を柔軟に判断していく必要があります。

②財産管理委任契約
本人の判断能力は十分であっても、病気などにより身体的な状態が不安定なときには、任意後見契約が発効するまでの間、日常的な金銭管理、入院等の医療契約を受任者に委任することを内容とする、財産管理の委任契約を指します。
任意後見契約との違いとしては、本人の判断能力に衰えはないことから、任意後見契約で定めた内容の一部の事務を委任することとなる点が挙げられます。身体的不自由の状態でも対応可能であること、死後事務に備えて、受任者が契約上の権限に基づき、財産の一部を管理することができるといった点が大きな利点となります。

③死後事務委任契約
任意後見契約では、本人が亡くなった後の財産管理、相続人等への財産の引き渡しなどは、死後事務として任意後見人が行います。しかし、葬儀、埋葬などは任意後見契約の代理権目録に記載することが出来ないため、任意後見業務の範囲外となっています。
そのため、本人が葬儀、埋葬なども本人の選んだ任意後見人に行って貰いたいと考えている場合には、別途死後事務委任契約を締結し、亡くなった後の業務の範囲、業務に対する報酬などを定めることで、本人の希望を叶えることが出来る契約となっています。

3.任意後見契約発効までの流れ

任意後見契約の締結した後、契約に基づく事務が開始されるまでには、どの様な順序で進んでいくのでしょうか?
まず、任意後見契約には3つの類型があります。

①将来型
将来判断能力が不十分となったときに任意後見が開始される基本的な契約形態です。

②移行型
任意後見契約と併せて財産管理委任契約等を締結し、判断能力があるうちから当該契約に基づく支援を開始し、判断能力が不十分になった後に任意後見に移行させる契約形態です。

③速攻型
任意後見契約締結時に判断能力の低下が疑われ、契約締結後すぐに任意後見を開始する契約形態です。

今回は移行型を例に任意後見開始までの流れを説明します。

①本人が受任者となる人を決めます
②受任者と協議し任意後見契約の内容を取り決めます
③取り決めた内容に基づき公証役場で公正証書の作成を行います
④本人の判断能力が十分な間は任意代理契約に基づく見守り、財産管理等を行います
⑤本人の判断能力が不十分な状況になった時点で、本人、配偶者、四親等内の親族又は任意後見受任者が家庭裁判所へ任意後見監督人選任の申立てを行います

任意後見契約締結から発効までは上記①から⑤の流れで進み、実際の任意後見業務が開始されることになります。

4.費用について

任意後見契約の締結を検討されている方にとって、いつから費用が発生するのかという点は気になる点ではないでしょうか?

この点について説明をしたいと思います。
まず、任意後見契約の締結後、任意後見契約が発効されるまでの間、見守り契約、財産管理委任契約などに基づく業務が発生します。これらの業務については、本人と受任者の間で費用発生の有無、費用が発生する場合はその金額を自由に定めることが可能です。
仮に、受任者が子などであれば、これらの契約に基づく事務作業に費用を発生させないというケースも多くあります。

しかしながら、受任者として弁護士等の専門家に依頼をした場合には、幾らかの費用が生じることになります。報酬の額は、本人、受任者の間で自由に取り決めることが出来ますが、見守り契約の場合は月額5千円から1万円、財産管理委任契約の場合は月額3万円から5万円の幅で収まることが比較的多いのではないかと思います。
また、任意後見契約発効後の費用としては月額5万円以上というケースが比較的多くなっています。

この辺りの費用については、本人と受任者の関係、実際に事務を開始した際にどれだけの負担が生じるのかなどを、任意後見契約時に協議し、互いが納得した形で決めることが大切になります。
 

5.まとめ

今回は任意後見契約についてご説明しましたが如何でしたでしょうか?
法定後見と比較しても、契約内容等を本人が定められることから、本人の意思が尊重される制度であることがご理解いただけたかと思います。
将来のために任意後見契約の利用を検討される方は専門家へご相談されることをお勧めします。